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旧広島市民球場の歴史と未来を守る会

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最高裁への申立てが受理され、最高裁での審理開始!

「旧広島市民球場解体の賛否を問う」住民投票が地裁、高裁で却下されたため申立て書を提出していましたが、最高裁より9月3日付で「当裁判所で受理する」という通知が届きました。
審理されれば原判決が破棄される可能性も高く、あきらめかけていた私共に<初めての朗報>であり、正直驚いています。おそらく広島市及び被上告人の松井市長も、上告の受理通知が送達されて慌てていることでしょう。

球場はすでに解体されており、訴えの利益が消滅したとして却下される可能性があるーとしても、上告理由書に「跡地の整備を求める趣旨も含んでおり、市民の要望に耳を傾けようとしていないーことの問題点」についても言及しているので、まだまだ球場問題は続いており、最高裁の審理結果によっては、広島市の住民投票条例や住民運動の根幹に関わる問題となるでしょう。
今後の経過を、しっかり見守っていてください。(土屋)

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# by shiminwomamoru | 2012-09-10 23:38 | アナウンス

「旧広島市民球場解体の賛否を問う」住民投票について

上告受理申立て理由書  (後半)

第2 原判決は本件却下処分が処分に当たらないとしながら本件却下処分を取消訴訟の対象と認めて本案審理をしており、最高裁判例に違反していることについて

1 原判決は、第1審判決(19頁4行目から20頁18行目まで)を一部改めて引用しているが(10頁)、その結果として、相手方が実施する「住民投票は、住民投票に付そうとする事項が重要事項に当たる場合に限り実施される(本件条例5条1項)ことからすれば、この場合に限って住民投票実施請求権が発生するといえるから、処分行政庁が、住民投票に付そうとする事項が重要事項に当たらないとして、代表者証明書交付申請の却下処分をしても、この却下処分によって、住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)が制限されるとはいえないというべきである。(原文改行)したがって、上記却下処分が住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限することを前提に、本件条例が地方自治法14条2項に違反するからこれに基づく本件処分も違法であるとする原告の上記主張は、その前提を欠くものとして採用できない。」と判示していることになる。
 つまり、投票対象が重要事項に当たる場合に限って住民投票実施請求権が発生するのであるから、投票対象が重要事項に当たらないとして代表者証明書交付申請を拒否する本件却下処分は、何ら住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限するものではないというのである。
 しかしながら、最高裁判例によれば、取消訴訟の対象となる行政庁の処分とは「公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう」(最高裁昭和39年10月29日、民集18巻8号1809頁ほか)ことは周知の通りである。原判決がいうように本件却下処分が何ら住民の権
利を制限するものでなく、「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する」ものでないとすれば、本件処分は取消訴訟の対象となる行政庁の処分ではないことになる。よって、本件訴えは行政処分でない行為の取消しを請求するものとして不適法となり、却下しなければならないはずである。
 この点について原判決(11頁)は、「おって、控訴人は、本件処分によって市民の住民投票実施請求権が制限されていないのであれば、本件処分を取消訴訟の対象とする判断と矛盾する旨主張する。しかし、本件処分が、取消訴訟の対象となることは明らかというべきところ、そのことから直ちに、本件処分によって住民投票実施請求権が制限されているということになるわけではないのであって、控訴人の上記主張は採用できない。」と判示し、本件処分が取消訴訟の対象となることは明らかであるとしている。
 このようにみると、原判決は、本件規則12条3項が条例によらないで住民投票実施請求権を制限していることが法14条2項に違反するという申立人の主張に対しては、本件却下行為は何ら住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限するものでないから違法ではないとし、そうとすればそもそも本件却下行為は取消訴訟の対象となる行政処分に当たらず、本件訴えは
不適法となるはずだという申立人の主張に対しては、本件処分は取消訴訟の対象となり、住民の権利義務を形成しまたは確定する行為(本件では住民の権利を制限する行為)であることは明らかであるとしているのであって、著しい理由の食い違いがある(よって原判決を破棄すべきであることは本件の上告理由書に記載した通りである。)。
 いずれにしろ、原判決は、上記のように「処分行政庁が、住民投票に付そうとする事項が重要事項に当たらないとして、代表者証明書交付申請の却下処分をしても、この却下処分によって、住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)が制限されるとはいえないというべきである。」(10頁)と明示しているのであるから、それにもかかわらず本件却下処分が行政処分であることを前提として本案審理を行い、本件処分は違法ではないと判断したことは、前記の最高裁判決に違反しているというほかはない。
2 さらに検討すると、申立人が前記第1で主張したように、条例によらず、規則で市長に代表者証明書の却下権限(実質的には住民投票拒否権)を付与することはできないから、本来は市長には代表者証明書の交付申請を却下する権限はない。そうとすると、申立人のした代表者証明書の交付申請は、広島市行政手続条例(以下「手続条例」という。)2条3号にいう「申請」ではなく、同条6号にいう「届出」に該当し、市長のした「却下処分」は事実行為としての交付の拒絶であることになる(この点については3で後述する。なお、手続条例36条により、申立人の届出は提出先とされている相手方の事務所に到達したから市長には証明書の交付義務があり、交付の拒絶は違法である。)。
この点からみても、市長のした却下処分は事実行為としての交付の拒絶であり、行政処分ではないから、原判決が却下処分が行政処分であることを前提として本案審理をしたことは前記の最高裁判決に違反するというべきである。よって、原判決には最高裁判所の判例(前掲、最高裁昭和39年10月29日、民集18巻8号1809頁ほか)と相反する判断があるから、本件は民事訴訟法第318条
1項の事件に該当する。
3 本件却下処分の取消訴訟を提起した申立人が、前記のように本件却下処分には処分性がない旨の主張をすることは、訴訟上の信義則に反する疑いがないではないので、念のため付言する。
 申立人は、本件訴訟を遂行する過程において、本件条例は前記第1の3でみた許可型(首長や議会に実質的に投票実施の拒否権を認める制度をいう。)ではなく、実施型(首長や議会に拒否権を認めず、所定の署名数が集まれば投票を実施する制度をいう。)であると確信するに至っている。なぜならば、本件条例は何ら市長に重要事項該当性の判断権や代表者証明書交付申請を却下する権限を与え
ておらず、むしろ市民(投票資格者)が署名をする際に重要事項該当性を判断することを想定していると解されるからである。所定の署名数が集まった事項は市政運営上の重要事項なのであり、投票結果に拘束力のない住民投票制度にあってはどのような事項について住民投票を実施しても問題がないことは前記第1の3でみた通りである。
 市長に代表者証明書交付申請を却下する権限がないとすれば、本件規則12条1項の交付申請は広島市行政手続条例(以下「手続条例」という。)2条3号にいう許認可の「申請」ではなく、同条6号にいう「届出」であり、手続条例36条によって形式上の要件(本件条例2条が規定する重要事項該当性と除外事項該当性については、市長にはこれらについての判断権がないから、形式上の要件と
解することはできないはずである。)を満たした申請書(届出)が相手方の事務所に到達したときには、届出をすべき手続上の義務は履行されたのだから、市長には代表者証明書を交付する義務があるというべきである。
 そして、市長に交付申請を却下する権限はないのだから、本件規則12条3項にいう「却下」はもとより行政処分ではなく、事実行為としての証明書交付の拒絶であるというほかはない(なお、形式上の要件を満たした届出がなされたのに代表者証明書の交付を拒絶することは手続条例36条に違反すると解されるから、本件規則12条3項は手続条例に違反して違法である。)。
 そうとすると、申立人は本来は却下処分の取消訴訟ではなく、当事者訴訟又は民事訴訟により、代表者証明書の交付請求をすべきであったことになる。しかしながら、本件規則が市長に却下権限を与えているため、申立人はやむなく却下処分の取消訴訟を提起したのである。よって、本訴提起後に市長には却下権限のないことに気付き、却下の処分性を否定する趣旨の主張をしたとしても、その原因
は本件規則を制定した市長及び相手方の側にもあるのだから、訴訟上の信義則に反することにはならない。
 そして、市長に却下処分をする権限はなく、本件訴えは処分でない行為を対象とする不適法なものであるとして却下されれば、市長に代表者証明書交付申請を却下する権限がないことが判決で認定されたことになる。申立人が改めて形式上の要件を満たした届出をすれば、市長には交付を拒否(却下)する権限はないのだから、手続条例36条によって市長には交付義務があることになり、申立人は証明書の交付を受けて本件訴訟を提起した目的を達成することができる。よって、申立人には却下行為に処分性がないことを主張する利益があるというべきである。
 なお、本件却下処分が条例上の根拠を欠くことなどを理由として取り消されるか、又は本件処分は条例上の根拠を欠くから本件訴えは処分でない行為を対象としているとして却下されれば、申立人はいずれの場合も本件訴訟を提起した目的を達成できるので、結論はいずれであっても構わないと考えている。

第3 仮に市長の却下処分が行政処分であるとすれば、広島市行政手続条例5条の処分基準が定められていないから、本件却下処分は違法であることについて

 手続条例5条1項は、「行政庁は、申請により求められた許認可等をするかどうかをその条例等の定めに従って判断するために必要とされる基準(以下「審査基準」という。)を定めるものとする。」と規定している。そして、同条2項は審査基準はできる限り具体的なものとしなければならないと規定し、3項は特別の支障があるときを除き審査基準を公にしておかなければならないと規定している。
 また、手続条例2条3号は、「申請」とは「条例等に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(「以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。」と規定している。
 以上の規定によると、仮に申立人のした交付申請が手続条例2条3号にいう「申請」であり、市長のした却下処分が「許認可等」の処分であるとすれば、市長は手続条例5条により、できる限り具体的な審査基準を定め、公にしておかなければならないことになる。ところが、市長は代表者証明書交付申請を却下する場合について何らの基準を定めていない。したがって、本件却下処分には手続的な違法性があることは明らかである。
 行政手続きの違法性は、その違法性がなければ処分庁が「さきにした判断と異なる判断に到達する可能性がなかったとはいえない」場合に当該処分の取消事由となると解されるところ(最高裁昭和46年10月28日判決・民集25巻7号1037頁、1042頁参照)、本件においても市長ができる限り具体的な審査基準を定め、これに照らして処分を行っていれば異なる判断に到達する可能性が
なかったとはいえないから(適切な審査基準が設定されていれば、代表者証明書が交付された可能性があるというべきである。)、市長が何らの審査基準を定めていなかったことは本件却下処分の取消事由となるというべきである(処分基準が設定・公表されずになされた処分が違法として取り消された最近の事例として、那覇地裁平20年3月11日判決・判時2056号56頁、東京高裁平13年6月14日判決・判時1757号51頁がある。)。
 住民が適正な手続きに基づいた行政処分を受ける権利は憲法31条で保障されており、処分基準を設定すべきことは前記の最高裁判決及び行政手続法5条でも処分庁に義務付けられているのであるから、本件は法令の解釈に関する重要な事項を含んでおり、民事訴訟法318条1項が定める事件に該当する。

第4 本件の訴えの利益について

 申立人は「旧広島市民球場の解体の賛否を問う住民投票」の実施を請求したところ、広島市長から却下処分を受けたものであるが、旧広島市民球場は本年5月頃に解体されてしまった。
 しかし、上告人が本件の住民投票を請求した目的は、広島市の戦後復興の一つの象徴である旧広島市民球場を意味ある形で保存、活用するためであり、球場自体の保存が不可能であれば、何らかの方法で後世に旧広島市民球場の記憶を残した上、市民のスポーツや文化活動の場として跡地の整備を求めることを当然に意図していた。よって、本件の住民投票の請求には跡地の整備を求める趣旨も含んでいたというべきである。
 ところが、広島市は本件跡地を市の意向にそった案に基づいて開発することを計画しており、旧広島市民球場の跡地にふさわしいスポーツや文化活動の場として整備して欲しいという市民の要望に耳を傾けようとしていない。よって、上告人は上記の趣旨に従って跡地の整備を行うことを求めるために、住民投票を請求する必要がある(なお、上記の趣旨に従った跡地の整備が市政運営上の重要事項として投票の対象になるかどうかは、市長や裁判所ではなく、署名を通じて広島市民が判断すべき問題である。)。
 原判決が確定してしまうと、申立人が新たに代表者証明書の交付を申請しても、市長は重要事項でないとして再び申請を却下する可能性がきわめて高いことは明らかである。したがって、申立人は本件で勝訴し、住民投票の内容を補正ないし修正して代表者証明書の交付を受ける必要があるから、申立人にはなお本件却下処分の取消しを求める訴えの利益があるというべきである。
 仮に訴えの利益がないとしても、今日では各地の地方公共団体で常設型住民投票条例の制定が進められていることに鑑みれば、本件規則及び本件処分の違法性が看過されると地方自治法14条2項に違反した条例が各地で制定されることになりかねず、法律による行政の原理ないし法治主義に反する事態が出来するおそれがあるばかりか、前記の住民の不信感を増幅し(前記第1の5参照)、ひいては日本における地方自治の進展を妨げることになるから、本件規則及び本件処分が違法であることを傍論で判断していただきたい。

以上
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# by shiminwomamoru | 2012-08-14 18:03 | 住民投票について

「旧広島市民球場解体の賛否を問う」住民投票について

上告受理申立て理由書  (前半)

平成24年7月31日 最高裁判所御中
申立人 広島市中区舟入本町××××
    土屋時子
相手方 広島市中区国泰寺町1丁目6番34号
    広島市
    同代表者・処分行政庁広島市長松井一實

平成24年(行ノ)第7号行政処分取消請求事件

上告受理申立ての理由

第1 原判決が、条例によらず規則によって市長が本件却下処分を行い、住民投票請求権を制限することができるとしたことは、地方自治法14条2項に違反することについて

1 地方自治法(以下「法」という。)14条2項は、「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。」と規定している。広島市民が広島市住民投票条例(以下「本件条例」という。)5条に基づいて住民投票の請求をするためには、広島市住民投票条例施行規則(以下「本件規則」という。)12条1項に基づき、広島市長(以下「市長」という。)に対して「住民投票実施請求代表者証明書」(以下「代表者証明書」という。)の交付を申請しなければならないが、市長が当該投票の対象は本件条例2条にいう「市政運営上の重要事項」(以下「重要事項」という。)に当たらないとして代表者証明書の交付申請を却下すると、市民は投票の実施のために必要な署名収集を開始することができなくなり、結果的に住民投票の実施は不可能となるから、市長の却下行為は本件条例によって市民に付与された住民投票請求権を制限する行為にほかならない。よって、市長に却下権限があることは、法14条2項により、本件条例で規定しなければならないというべきである。
 ところが、本件条例は、いつ、だれが重要事項該当性を判断するのかについて何も規定していないから、代表者証明書の交付申請時に、市長が重要事項該当性を判断し、交付申請を却下して住民投票の実施を拒否する権限があるということはできないはずである。そうすると、本件却下処分は、市長が条例によらないで公権力を行使し、住民の住民投票請求権を制限するものであって、法14条2項
に違反して違法であるから、取り消されるべきである(むしろ本件処分は条例上の根拠を欠いた無権限の処分であって無効と解されるが、申立人は出訴期間内に取消訴訟を提起したので、取消しを請求する。)。
 なお、日本国の法体系では、条例は規則に優位するのであるから、条例によって広島市民に付与された住民投票請求権を、条例の根拠または条例による明確な委任(市長に住民投票請求を拒否する権限を付与するのであれば、少なくとも処分庁と処分権限は条例で明記すべきである。)なしに市長が制限できないことは、法14条2項の規定を待つまでもなく明らかである。

2 本件条例17条は、「この条例に定めるもののほか、住民投票に必要な事項は、規則で定める。」と規定し、これを受けて本件規則12条2項は、市長に本件条例2条が定める重要事項該当性の判断権を認め、同条3項は市長に代表者証明書の交付申請を却下する権限を付与している。
 しかしながら、前記1でみたように、法14条2項は住民の権利を制限するには条例によらなければならないと規定しており、本件却下処分は権力的に市民の住民投票請求権を制限する行政処分なのだから、市長に却下処分をする権限があることは規則ではなく、条例で規定しなければならないというべきである。
 仮に市長の権限の一部を規則に委任するとしても、市長に重要事項該当性の判断権及び代表者証明書交付申請の却下権限(申請が却下されると住民投票の実施は不可能となるから実質的には住民投票拒否権である。)があること自体は条例の本文で規定する必要があり、本件条例17条のような包括的な委任規定によって規則に処分権限を白紙委任することは許されないというべきである。これは財
務条例が課税庁や課税要件を特定せずに規則に課税権限を白紙委任することが許されないのと同じことである。
 ちなみに、松本英明著「逐条地方自治法」(第6次改訂版)185頁は、法14条2項に違反しない事項(つまり規則で規定できる事項)の一例として、「法令や条例に規定されている規制に関する付随的事項又は実務の細目的事項に限定されたものであり、かつ、独自の規制を新たに創設するのではない事項」を挙げている。
 本件規則12条3項が定める市長の却下権限は、実質的には住民投票拒否権にほかならないから、「法令や条例に規定されている規制に関する付随的事項又は実務の細目的事項」といえないことは明らかである。また、本件条例は、いつ、だれが重要事項該当性を判断するのかについて何も規定していない(つまり、署名時に、市民が重要事項該当性を判断するものと解される。)にもかかわらず、
本件規則12条2項及び3項は、署名収集前に、市長が重要事項該当性を判断する権限があり、さらに代表者証明書の交付申請を却下する権限(住民投票拒否権)があることを定めているのであるから、「独自の規制を新たに創設」しているというべきである。
 よって本件規則12条は本件条例による委任の範囲を超えており、違法、無効であるから、本件却下処分も違法であり、取り消されるべきである。

3 念のため、市長に重要事項該当性の判断権及び代表者交付申請の却下権限を付与することは本件条例の性格をまったく変容させてしまう重大な事項であり、「法令や条例に規定されている規制に関する付随的事項又は実務の細目的事項」とはとうていいえないことを付言する。
 本件条例はいわゆる常設型住民投票条例である。常設型住民投票条例とは、予め住民投票手続を定めておき、一定数の住民の署名が集まったときには投票の実施を義務づける条例をいう。全国初の常設型住民投票条例は、愛知県高浜市が2000年12月(翌年4月施行)に制定した「高浜市住民投票条例」である。「国民投票/住民投票情報室」のホームページ(http://www.ref-info.net)によると、2012年3月現在では42の地方公共団体(市町村)が常設型住民投票条例を制定している。
 常設型住民投票条例が制定される背景には、住民投票の実施がきわめて困難であるという実情がある。常設型住民投票条例がない場合には、住民投票を実施するためには個別の案件ごとに住民投票条例を制定しなければならない。しかし、住民投票が求められるのは行政(首長)や議会の政策に住民が疑問を抱いている場合が通例であるから、首長や議会は自らの政策を否定されることを恐れ、住民
投票条例を発議したり制定することはほとんど期待できない。
 実際に、1979年から2011年末までの間に各地の地方公共団体で住民投票条例が可決された件数は509件であり、否決された件数はこれを上回る595件である。しかも、可決された509件のうち435件は市町村合併に関するもの(以下「合併型」という。)であるから、市町村合併以外の争点に関するものは74件である。このうち46件は常設型住民投票条例が可決された事例なの
で、合併以外の地域の重要争点に関するもの(以下「重要争点型」という。)は28件だけである。
 つまり、国策として進められた市町村合併に関する合併型の条例は52%が可決されているが(可決435:否決406)、それ以外の重要争点型の条例は13.6%しか可決されておらず、86.4%が否決されているのである(可決28:否決178)。この期間に実際に行われた住民投票の件数を見ても、合併型は467件であるのに対し、重要争点型は19件だけであり、「合併型:重要争
点型」の比率は96:4である(以上のデータは前出の「国民投票/住民投票情報室」のホームページによる。)。
 また、2000年1月に徳島市で吉野川可動堰建設の賛否を問う住民投票が行われたが、法74条に基づく住民投票条例の制定を求める直接請求では実に有権者の48.8%(有権者数20万8194人、有効署名数10万1535人)が署名したにもかかわらず、徳島市長は住民投票は必要ないという意見を付し、市議会は有権者のほぼ半数が制定を求めた条例案を否決した。
 このように合併以外の地域の重要争点について住民投票条例を制定し、投票を実施することは、首長や議会の壁に阻まれて非常に難しい。そこで、首長や議会による拒否権を認めず、一定数の署名が集まれば必ず投票を実施できるようにするために、常設型住民投票条例の制定が必要とされているのである。
 ところが、本件条例のように、投票対象を市政運営上の重要事項に限るものとし(2条柱書)、さらに投票対象に除外事項を規定(2条各号)すると、いつ、だれがこれを判断するのかという問題が生じる。この点については、①首長や議会(あるいは第三者機関)が判断権を有するという制度と、②その判断は住民に委ねられており、住民が署名時に判断するという制度があり得る。
 ①の制度は、ある投票対象について、首長や議会が「重要事項に該当する」あるいは「除外事項に該当しない」として投票の実施(またはその前提となる署名収集)を許可した場合に限って投票が行われるのであるから、「許可型」の常設型住民投票条例ということができる。これに対して②の制度は、ある投票対象について、所定の署名数が集まればその対象は重要事項となり、必ず投票が実施さ
れるのであるから、「実施型」の常設型住民投票条例ということができる。
 ①の許可型は、実質的に首長や議会に住民投票実施の拒否権を認めることになり、しかも「拒否処分」に対して住民が訴訟を提起することによって(本件がまさにその初めての実例である。)、投票対象となるかどうかを裁判所に決めてもらわなければならないことになる。しかも、本件条例のように、「市の機関の権限に属しない事項」(2条1号)や「前各号に定めるもののほか、住民投票に付することが適当でないと明らかに認められる事項」のような包括的な除外事項を設けると、原子力発電所建設やダム(堰)建設など、これまで投票が行われてきた事項の多くについて投票の実施が拒否される可能性があり、常設型住民投票制度の意義を大きく損なうおそれがある。

 ②の実施型は、所定数の住民の署名が集まった場合には必ず投票を実施するという常設型住民投票条例の本来の目的に適合しており、ある事項が投票対象として適切であるかどうかを住民が自ら判断するのであるから、住民自治ないし住民参加の制度としてより適切である。そもそも条例に基づく住民投票制度は、投票結果に対する尊重義務が生じるだけであり、何らの法的拘束力が生じるものでは
ないから、所定数の署名が集まったのであれば(それが投票の対象としてふさわしくなければ、所定数の署名は集まらないであろう。)、本来どのような事項に対して住民投票を行っても問題はないはずである。原理的に考えてみても、住民が住民投票によって意思を明らかにしたいと望んでいるのに、投票を禁止しなければならない事項などは存在しないであろう。
 実際にも、これまでに日本で住民投票の実施のために条例制定が求められた事例は1000件を超えているが(直接請求、首長提案及び議員提案のすべてを含む。)、これらの事例はすべて住民が地域の問題を真摯に考えた結果に基づくものであり、投票対象として不適切な事例は1件も存在しない。
 また、署名の収集は住民の労力と費用によって行われるのであるから、実施型の条例によって署名収集が行われる機会が増加しても、それによって地方公共団体の経費が不当に増加することにはならない。
 なお、申立人は、原判決がいうように(8~9頁)、すべての常設型住民投票条例が実施型でなければならないと主張しているわけではない。許可型の条例は首長や議会の拒否権を認めないという本来の常設型住民投票制度の趣旨に反するものではあるが、それでもあえて許可型の条例を制定するという地方公共団体はそうすればよいのである。しかし、条例本文が首長等の拒否権について何ら規定
せず、住民は実施型の条例が制定されたと認識していたにもかかわらず、規則が首長等に拒否権を与え、条例そのものを許可型に変容させるようなことは、住民の常設型住民投票制度に対する期待を裏切ることになりかねず、しかも条例によらないで住民投票請求権を制限することにほかならないから、法14条2項に違反すると主張しているのである。
 常設型住民投票条例の歴史は浅く、許可型と実施型の区別があることは十分に認識されていない。相手方は本件条例が許可型であると主張し、原判決もこの主張を追認していることになるが、相手方及び原判決が両者の区別を十分認識しているかどうかは疑わしい。むしろ、許可型の条例は市長に拒否権を認め、住民投票請求権を制限することになることを十分に認識していないために、本件規則が
市長に重要事項該当性の判断権及び代表者証明書交付申請の却下権限を付与することを安易に容認しているのではないだろうか。
 市長にこれらの権限を付与し、本件条例を許可型の条例とするためには、条例の本文で「市長は、住民投票の対象が2条に定める重要事項に該当するかどうか、及び同条各号に定める除外事項に該当するかどうかを判断する権限を有する。」こと、及び「市長は、住民投票の対象が2条に定める重要事項に該当しないと判断したとき、又は2条各号に定める除外事項に該当すると判断したときは、住民投票代表者証明書の交付申請を却下する。」ことを規定する必要がある。

4 原判決(10~11頁)は、前記1及び2の点につき、「確かに、本件条例において処分行政庁に却下処分をする権限があることが明記されているとはいえず、規則に委任する事項について逐一特定されているわけではないものの、被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば、本件条例自体において処分行政庁に却下処分をする権限があることを明記すべき
であるとか、規則に委任する事項を特定すべきであるとまでいうことはできず、本件条例に定めるもののほか住民投票に関し必要な事項は規則で定めること(本件条例17条)が明記されているところであるから、本件条例ないし本件規則12条3項の規定について、違法、無効な白紙委任に当たると解することはできない。」と判示している。
 原判決は、本件条例が市長の重要事項該当性の判断権及び代表者交付申請の却下権限について何も規定していないにもかかわらず、本件規則が市長にこれらの権限を付与していることが法14条2項に違反せず、本件処分は違法ではないとしているわけであるが、その理由については「被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば」と述べるだけである。
なぜ、「被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば」、市長は本件条例に明文の規定がないのに、本件規則に基づいて市民の住民投票請求権(ないしその前提となる代表者証明書交付申請権)を制限することができるのであろうか。むしろ、「被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば」、本件条例が住民に付与し
た住民投票請求権を、本件条例によらないで本件規則に基づき、市長が制限できるとすることは、法14条2項に違反することになるはずである。

 以上の次第で、原判決の理由はまったく不十分であって、原判決に理由不備の違法がある(よって原判決を破棄すべきことは、本件の上告理由書に記載した通りである。)ことは明らかである。そして、条例によらず、規則で市長の却下権限を定めることはできないから、市長のした本件却下処分は違法であり、取り消されるべきである(前述のように、むしろ本件処分は条例上の根拠を欠いた無権限の処分であって無効と解されるが、申立人は出訴期間内に取消訴訟を提起したので、取消しを請求する。)。これと異なる原判決は破棄されるべきである。
 なお、市長に重要事項該当性判断権ないし住民投票拒否権があることは条例で規定すべきであり、規則で規定することはできないという問題は、地方自治法14条2項の解釈に関する重要な事項を含んでいる。よって、本件は民事訴訟法318条1項が定める事件に該当する。

5 前記3でみたように、住民投票条例の制定および住民投票の実施が首長や議会の反対によってきわめて困難であることに鑑み、常設型住民投票条例は住民の一定の署名が集まったときには必ず投票を実施するものとして、首長や議会の拒否権を認めないことを本来の目的としている。それにもかかわらず、実際の常設型住民投票条例には、住民の署名が集まれば投票を実施する「実施型」だけでは
なく、首長や議会が同意しなければ署名の収集や投票の実施ができない「許可型」が存在している。
 本件条例のように条例自体は市長の拒否権について何ら規定していないにもかかわらず、規則に市長の拒否権が規定されているという制度の下では、市民は実施型の条例が制定されていたと考えていたのに、実際に住民投票の実施を請求しようとすると規則に基づいて市長に拒否されるという事態が生じることになり、市民の不信感を招くことになりかねない。規則によって実施型を許可型に変容さ
せるような制度は、地方自治法14条2項に違反して違法であるだけでなく、地方行政や住民参加制度に対する信頼を損なう可能性があるという観点からも許されないというべきである。
 常設型住民投票条例が投票対象を制限すると、いつ、だれが投票対象の適格性を判断するのかという問題が生じる。そして、首長や議会に判断権を認めると、当該条例は実施型から許可型に変容してしまうわけである。最初の常設型住民投票条例である高浜市条例が投票対象を制限し、後に続く地方公共団体の多くがこの点を意識せずに高浜市条例の規定を踏襲しているため(本件条例2条も高浜市
条例の丸写しである。)、常設型住民投票条例を制定し、あるいは制定を予定している地方公共団体では、常に本件と同じ問題が生じ、住民の不信感を招くおそれがあるのである。
 このような不信の拡大を防止するためにも、本件において本件規則及び本件処分の違法性を認定して他の地方公共団体の自覚を促す必要があり、その意味でも本件は法令(常設型住民投票条例)の解釈に関する重要な問題を含んでいる。
 よって、本件は民事訴訟法318条1項の事件に該当するというべきである。
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# by shiminwomamoru | 2012-08-14 18:01 | 住民投票について

「旧広島市民球場解体の賛否を問う」住民投票について

7月31日に最高裁への「上告理由書」と「上告受理申立て理由書」を高等裁判所に提出いたしましたので、お知らせいたします。

尚、被上告人は現市長の松井一實氏となっていますが、当時の当事者は前市長の秋葉忠利氏であったことはあらためていうまでもあません。


上告理由書

平成24年7月31日
最高裁判所御中
上告人 広島市中区舟入本町××××
    土屋時子
被上告人 広島市中区国泰寺町1丁目6番34号
     広島市 
     同代表者兼処分行政庁広島市長松井一實

平成24年(行サ)第6号行政処分取消請求事件

上告の理由

第1 地方自治法14条2項違反の主張に対する原判決の理由不備について

1 地方自治法(以下「法」という。)14条2項は、「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。」と規定している。広島市民が広島市住民投票条例(以下「本件条例」という。)5条に基づいて住民投票の請求をするためには、広島市住民投票条例施行規則(以下「本件規則」という。)12条1項に基づき、広島市長(以下「市長」という。」)に対して「住民投票実施請求代表者証明書」(以下「代表者証明書」という。)の交付を申請しなければならないが、市長が当該投票の対象は本件条例2条にいう「市政運営上の重要事項」(以下「重要事項」という。)に当たらないとして代表者証明書の交付申請を却下すると、市民は投票の実施のために必要な署名収集を開始することができなくなり、結果的に住民投票の実施は不可能となるから、市長の却下行為は本件条例によって市民に付与された住民投票請求権を制限する行為にほかならない。よって、市長に却下権限があることは、法14条2項により、本件条例で規定しなければならないというべきである。
 ところが、本件条例は、いつ、だれが重要事項該当性を判断するのかについて何も規定していないから、代表者証明書の交付申請時に、市長が重要事項該当性を判断し、交付申請を却下して住民投票の実施を拒否する権限があるということはできないはずである。そうすると、本件却下処分は、市長が条例によらないで公権力を行使し、住民の住民投票請求権を制限するものであって、法14条2項
に違反して違法であるから、取り消されるべきである(むしろ本件処分は条例上の根拠を欠いた無権限の処分であって無効と解されるが、上告人は出訴期間内に取消訴訟を提起したので、取消しを請求する。)。
 なお、日本国の法体系では、条例は規則に優位するのであるから、条例によって広島市民に付与された住民投票請求権を、条例の根拠または条例による明確な委任(市長に住民投票請求を拒否する権限を付与するのであれば、少なくとも処分庁と処分権限は条例で明記すべきである。)なしに市長が制限できないことは、法14条2項の規定を待つまでもなく明らかである。

2 本件条例17条は、「この条例に定めるもののほか、住民投票に必要な事項は、規則で定める。」と規定し、これを受けて本件規則12条2項は、市長に本件条例2条が定める重要事項該当性の判断権を認め、同条3項は市長に代表者証明書の交付申請を却下する権限を付与している。
 しかしながら、前記1でみたように、法14条2項は住民の権利を制限するには条例によらなければならないと規定しており、本件却下処分は権力的に市民の住民投票請求権を制限する行政処分なのだから、市長に却下処分をする権限があることは規則ではなく、条例で規定しなければならないというべきである。
 仮に市長の権限の一部を規則に委任するとしても、市長に重要事項該当性の判断権及び代表者証明書交付申請の却下権限(これは実質的には住民投票拒否権である。)があること自体は条例の本文で規定する必要があり、本件条例17条のような包括的な委任規定によって規則に処分権限を白紙委任することは許されないというべきである。これは財務条例が課税庁や課税要件を特定せずに規則に課
税権限を白紙委任することが許されないのと同じことである。
 ちなみに、松本英明著「逐条地方自治法」(第6次改訂版)185頁は、法14条2項に違反しない事項(つまり規則で規定できる事項)の一例として、「法令や条例に規定されている規制に関する付随的事項又は実務の細目的事項に限定されたものであり、かつ、独自の規制を新たに創設するのではない事項」を挙げている。市長に重要事項該当性の判断権及び代表者証明書交付申請の却下権限が
あることは、実質的に市長に住民投票を拒否する権限があることを意味するから、「法令や条例に規定されている規制に関する付随的事項又は実務の細目的事項に限定されたものであり、かつ、独自の規制を新たに創設するのではない事項」といえないことは明らかであり、条例本文で定めるべきである。よって本件規則12条は本件条例による委任の範囲を超えており、違法、無効であるから、本件却下処分も違法であり、取り消されるべきである。

3 原判決(10~11頁)は、前記1及び2の点につき、「確かに、本件条例において処分行政庁に却下処分をする権限があることが明記されているとはいえず、規則に委任する事項について逐一特定されているわけではないものの、被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば、本件条例自体において処分行政庁に却下処分をする権限があることを明記すべきであるとか、規則に委任する事項を特定すべきであるとまでいうことはできず、本件条例に定めるもののほか住民投票に関し必要な事項は規則で定めること(本件条例17条)が明記されているところであるから、本件条例ないし本件規則12条3項の規定について、違法、無効な白紙委任に当たると解することはできない。」と判示している。
 原判決は、本件条例が市長の重要事項該当性の判断権及び代表者交付申請の却下権限について何も規定していないにもかかわらず、本件規則が市長にこれらの権限を付与していることが法14条2項に違反せず、本件処分は違法ではないとしているわけであるが、その理由については「被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば」と述べるだけである。
 なぜ、「被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば」、市長は本件条例に明文の規定がないのに、本件規則に基づいて市民の住民投票請求権(ないしその前提となる代表者証明書交付申請権)を制限することができるのであろうか。むしろ、「被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば」、本件条例が住民に付与し
た住民投票請求権を、本件条例によらないで本件規則に基づき、市長が制限できるとすることは、法14条2項に違反することになるはずである。
 以上の次第で、原判決の理由はまったく不十分であって、原判決に理由不備の違法がある(これは民事訴訟法312条1項6号の上告理由に該当する。)ことは明らかであり、しかも本件処分が適法であるとした原判決の結論は誤りであるから、原判決を破棄すべきである。

第2 原判決は本件却下処分が住民の権利を制限するものではないとしながら取消訴訟の対象となるとしており、この点に理由の食い違い及び理由不備があることについて
1 原判決は、第1審判決(19頁4行目から20頁18行目まで)を一部改めて引用しているが(10頁)、その結果として、被上告人が実施する「住民投票は、住民投票に付そうとする事項が重要事項に当たる場合に限り実施される(本件条例5条1項)ことからすれば、この場合に限って住民投票実施請求権が発生するといえるから、処分行政庁が、住民投票に付そうとする事項が重要事項に当
たらないとして、代表者証明書交付申請の却下処分をしても、この却下処分によって、住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)が制限されるとはいえないというべきである。(原文改行)したがって、上記却下処分が住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限することを前提に、本件条例が地方自治法14条2項に違反するからこれに基づく本件処分も違法であるとする原告の上記主張は、その前提を欠くものとして採用できない。」と判示していることになる。
 つまり、投票対象が重要事項に当たる場合に限って住民投票実施請求権が発生するのであるから、投票対象が重要事項に当たらないとして代表者証明書交付申請を拒否する本件却下処分は、何ら住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限するものではないというのである。
 しかしながら、最高裁判例によれば、取消訴訟の対象となる行政庁の処分とは「公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう」(最高裁昭和39年10月29日、民集18巻8号1809頁ほか)ことは周知の通りである。原判決がいうように本件却下処分が何ら住民の権利を制限するものでなく、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定するものでないとすれば、本件処分は取消訴訟の対象となる行政庁の処分ではないことになる。よって、本件訴えは行政処分でない行為の取消しを請求するものとして不適法となり、却下しなければならないはずである。
 この点について原判決(11頁)は、「おって、控訴人は、本件処分によって市民の住民投票実施請求権が制限されていないのであれば、本件処分を取消訴訟の対象とする判断と矛盾する旨主張する。しかし、本件処分が、取消訴訟の対象となることは明らかというべきところ、そのことから直ちに、本件処分によって住民投票実施請求権が制限されているということになるわけではないのであって、控訴人の上記主張は採用できない。」と判示し、本件処分が取消訴訟の対象となることは明らかであるとしている。
 このようにみると、原判決は、本件規則12条3項が条例によらないで住民投票実施請求権を制限していることが法14条2項に違反するという上告人の主張に対しては、本件却下行為は何ら住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限するものでないから違法ではないとし、そうとすればそもそも本件却下行為は取消訴訟の対象となる行政処分に当たらず、本件訴えは
不適法となるはずだという上告人の主張に対しては、本件処分は取消訴訟の対象となり、住民の権利義務を形成しまたは確定する行為(本件では住民の権利を制限する行為)であるとしているのであって、著しい理由の食い違いがある(これは民事訴訟法312条1項6号の上告理由に該当する。)。よって原判決を破棄すべきである。
 なお、前記第1でみたように、本件却下処分は住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票請求権)を制限するものである。よって、前記のように、原判決が、本件却下行為は住民の権利を制限するものでないから、本件規則が法14条2項に違反するという上告人の主張は前提を欠くと判断したことは誤りである。このような誤りが生じたのは、原判決には前記のような理由の食い違いが
あり、本件却下処分が住民の権利を制限するものであるかどうかについて、一貫した認識を欠いているからである。この点においても、原判決を破棄すべきことは明らかである。
2 原判決(11頁)は、前記のように「おって、控訴人は、本件処分によって市民の住民投票実施請求権が制限されていないのであれば、本件処分を取消訴訟の対象とする判断と矛盾する旨主張する。しかし、本件処分が、取消訴訟の対象となることは明らかというべきところ、そのことから直ちに、本件処分によって住民投票実施請求権が制限されているということになるわけではないのであって、控訴人の上記主張は採用できない。」と判示している。
 しかしながら、なぜ「本件処分が、取消訴訟の対象となることは明らかというべき」なのか、原判決はまったく理由を示していない。前記1でみたように、原判決(10頁)は、第1審判決を引用して「この却下処分によって、住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)が制限されるとはいえないというべきである。」と判示しているのに、なぜ他方では突然「本件処分が、
取消訴訟の対象となることは明らかというべき」であることになるのだろうか。
まったく理由が示されていないために理解不能であり、原判決には理由不備の違法がある(これは民事訴訟法312条1項6号の上告理由に該当する。)ことは明らかである。よって、原判決を破棄すべきである。

第3 本件の訴えの利益について

 上告人は「旧広島市民球場の解体の賛否を問う住民投票」の実施を請求したところ、広島市長から却下処分を受けたものであるが、旧広島市民球場は本年5月頃に解体されてしまった。
 しかし、上告人が本件の住民投票を請求した目的は、広島市の戦後復興の一つの象徴である旧広島市民球場を意味ある形で保存、活用するためであり、球場自体の保存が不可能であれば、何らかの方法で後世に旧広島市民球場の記憶を残した上、市民のスポーツや文化活動の場として跡地の整備を求めることを当然に意図していた。よって、本件の住民投票の請求には跡地の整備を求める趣旨も含んでいたというべきである。
 ところが、広島市は本件跡地を市の意向にそった案に基づいて開発することを計画しており、旧広島市民球場の跡地にふさわしいスポーツや文化活動の場として整備して欲しいという市民の要望に耳を傾けようとしていない。よって、上告人は上記の趣旨に従って跡地の整備を行うことを求めるために、住民投票を請求する必要がある(なお、上記の趣旨に従った跡地の整備が市政運営上の重要事項として投票の対象になるかどうかは、市長や裁判所ではなく、署名を通じて広島市民が判断すべき問題である。)。
 原判決が確定してしまうと、上告人が新たに代表者証明書の交付を申請しても、市長は重要事項でないとして再び申請を却下する可能性がきわめて高いことは明らかである。したがって、上告人は本件で勝訴し、住民投票の内容を補正ないし修正して代表者証明書の交付を受ける必要があるから、上告人にはなお本件却下処分の取消しを求める訴えの利益があるというべきである。
 仮に訴えの利益がないとしても、今日では各地の地方公共団体で常設型住民投票条例の制定が進められていることに鑑みれば、本件規則及び本件処分の違法性が看過されると地方自治法14条2項に違反した違法な条例が各地で制定されることになりかねず、法律による行政の原理ないし法治主義に反する事態が出来するおそれがあるから、本件規則及び本件処分が違法であることを傍論で判断していただきたい。


以上
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# by shiminwomamoru | 2012-08-14 17:59 | 住民投票について

市民のみなさんお怒りのようです。

旧広島市民球場跡地問題。

前回の中国新聞のねつ造まがいの記事に関連して、こんな動画が配信されていました。



元はhttp://youtu.be/lhpoybvOFR0
こちら

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# by shiminwomamoru | 2012-07-26 16:08 | アナウンス

旧広島市民球場問題の病根

さる7月11日に広島市庁舎で開かれた旧広島市民球場跡地委員会の検討グループ会議について、翌日の中国新聞にねつ造記事まがいのものが掲載されました。

その記事を公開するとともに、本日下記の文書を関係各所に提出してきましたのでお知らせしておきます。
また一昨日、中国新聞にも抗議ととに事実関係の確認にうかがっていますので、後日その件もご報告できるとおもいます。
b0207942_20214751.jpg

広島市議会議員各位

 さる7月12日付の中国新聞に掲載された旧広島市民球場跡地委員会に関する記事について、一市民としておおいなる疑問と憤りをおぼえました。このような悪質な記事を野放しにしていては、広島市政に多大な悪影響があることは明白で、市議会として善処していただきたく書面をお送りします。
 当該記事は、別紙のとおりです。
 「旧市民球場 2分野案に絞る」と見出しにあるように、この記事には前日の11日に広島市庁舎で開催された同委員会の検討グループ会議において、旧市民球場跡地の活用法に関して多数提案されていた案を整理した「観光・アミューズメント」「文化・芸術」「スポーツ」「平和発信」「緑地広場」「交通」「その他」の7つの分野から、討論の結果あたかも前記の2分野に絞られたかのように書かれています。
 しかし現実には、そのような討議も議論も議決もなされておらず、これは誤報というよりも、悪質なねつ造記事ともいえるものです。これを読んだ読者は、いろいろあったようだけど、跡地はホールか緑地広場になるんだね、そう誤認してしまうことでしょう。
 当日、会場におられた議員の方には当惑されているとおもいます。また傍聴していた市民も、この記事を目にして腰をぬかさんばかりにおどろき、そして烈火のごとく怒っております。
 結論からいえば、検討グループ会議は大元の委員会の進行をスムーズに進めるための補完的な会議で、ここで決定めいたことがなされることはなく、もちろん議事進行もそのように進めた、それが山野井座長、また跡地構想担当の見解です。事実もそのとおりです。
 たまたまこの会議のしめくくりに山野井座長が「この2分野に絞られたのかな、と個人的にはおもっております」というように発言した「個人的な見解」を、あたかも決定事項のように勝手に解釈(というよりあらかじめ恣意的にそのように構成したかったようですが)して書かれた悪質きわまりない記事といえるものです。
 同新聞社においては、市民球場の跡地問題が持ち上がってから解体に至るまでの経緯においても、これに類する悪質なフライング記事がたびたび散見され、そのことで同問題が「市民球場の解体」そして「緑地公園というイベント広場」へと恣意的にミスリードされてきたのではないかと察せられます。広島という地方都市の舵取りにすくなからぬ影響を与えかねない一メディアとしての良識、見識を疑わざるをえないのは誠に残念でなりません。
 ことの事実関係は、検証していただければとおもいます。そのうえで、かの新聞記事に重大な誤認、瑕疵があったと認められた場合、同社の偏向した報道姿勢は広島市民に多大な不利益をもたらすばかりでなく、広島市の将来にも多大な影響をおよぼしかねませんので。それなりの対処をお願いしたくおもいます。



市政記者クラブ記者各位

 さる7月12日付の中国新聞に掲載された旧広島市民球場跡地委員会に関する記事について、ひとりの読者、視聴者として、また一市民として大いなる疑問と憤りをおぼえました。そこで、市政に関する報道を共有し管理する「市政記者クラブ」のメンバーとして、この“事件”にきちんと対処していただきたくお伝えいたします。
 当該記事は、別紙のとおりです。
 「旧市民球場 2分野案に絞る」と見出しにあるように、この記事には前日の11日に広島市庁舎で開催された同委員会の検討グループ会議において、旧市民球場跡地の活用法に関して多数提案されていた案を整理した「観光・アミューズメント」「文化・芸術」「スポーツ」「平和発信」「緑地広場」「交通」「その他」の7つの分野から、討論の結果あたかも前記の2分野に絞られたかのように書かれています。
 当日、会場で取材にあたられていた方は、この記事が事実でないことはもちろんご存じでしょう。また傍聴していた市民も、この記事を目にして腰をぬかさんばかりにおどろき、そして烈火のごとく怒っております。
 結論からいえば、検討グループ会議は大元の跡地委員会の進行をスムーズに進めるための補完的なもので、ここで決定めいたことがなされることはありません。もちろん議事進行もそのように進めた、それが山野井座長、また跡地構想担当の見解ですし、事実もそのとおりです。
 この会議のしめくくりに山野井座長が「この2分野に絞られたのかな、と個人的にはおもっております」というように発言した「個人的な見解」を、あたかも決定事項のように勝手に解釈(というよりあらかじめ恣意的にそのように構成したかったようですが)して書かれた悪質きわまりない記事といえるものです。
 同新聞社においては、市民球場の跡地問題が持ち上がってから解体に至るまでの経緯においても、これに類する悪質なフライング記事がたびたび散見され、そのことで同問題が「市民球場の解体」そして「緑地公園というイベント広場」へと恣意的にミスリードされてきたのではないかと察せられます。広島という地方都市の舵取りに少なからぬ影響を与えかねない一メディアとしての良識、見識を疑わざるをえないのは誠に残念でなりません。
 今回の報道に関しての事実関係は、それぞれに検証していただければとおもいます。それと同時に、ぜひこの機会に旧広島市民球場跡地問題をあらためて検証されんことを、せつにねがっておきます。
 旧広島市民球場跡地委員会は、恣意的な人選をはじめ、その運営に当たっても多くの疑念が持たれているところです。また市議会においても同会議の有効性に疑義が表明されていますし、当事者である委員からも委員会ではまともな議論ができず、また有効な提案はできないだろうという懐疑的な見解も表明されています。
 今回の件は、まさにこのような委員会が抱える諸問題の一端が露出したケースともいえるのではないでしょうか。
 旧広島市民球場跡地の活用は、広島市の遊休地の問題というにとどまらず、広島市の将来のあり方をも左右する重要事項です。くれぐれも市民の不利益になることがないようメディアとして警鐘を鳴らしていただければと切に願うものです。


                   以上  
                        (ほ)
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# by shiminwomamoru | 2012-07-20 20:45 | アナウンス

上告手続きしました。


5月28日に高等裁判所へ行き、先日の高裁判決を不服とし、最高裁へ「上告及び上告受理申立書」を提出してきました。

1週間くらいで提起通知書が届き、その日から50日以内に理由書を提出しなければなりません。
上告後、最高裁で取消訴訟として審理するかどうかを決めるのは高裁の裁判長とのこと・・・。

またまた変な話と思いませんか? 
裁判長の判決に対する不服として最高裁へ上告するのに、上告するか否かを決定するのは「その裁判長」とは?? 

納得いかないシステムだらけ。。。

                          土屋時子
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# by shiminwomamoru | 2012-05-30 09:49 | アナウンス

結審後の会見。

さきの住民投票の控訴審の結果、そして今後のことについては、この動画でご覧下さい。



市民球場問題は、いまだに終息せず。
民意をふんずけての解体というボタンのかけちがいから、いろいろなひずみがではじめています。

こんな問題も。

事実関係はさておき、こうした事件が露見することになるのも、行政の不徳のいたすところ。
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# by shiminwomamoru | 2012-05-17 16:55 | アナウンス

結審

きょうの結審。
残念ながら、というか予想どおりというか控訴は棄却されました。

また後日、今後のこともふくめてくわしく報告したいとおもいます。
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# by shiminwomamoru | 2012-05-16 20:20 | アナウンス

住民投票・行政訴訟の結審

広島市民球場解体の賛否を問う住民投票の行政処分取り消し請求事件が結審します。

勝訴、敗訴、どちらになってもその結果をみなさんと共有できればとおもいます。
お時間のある方は、ぜひご参集ください。

事件名 平成23年度(行コ)第14号
日 時 5月16日(水) 午後1時10分から
場 所 広島高等裁判所202号法廷(北棟2F)
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# by shiminwomamoru | 2012-05-15 10:13 | アナウンス