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旧広島市民球場の歴史と未来を守る会

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「旧広島市民球場解体の賛否を問う」住民投票について

上告受理申立て理由書  (後半)

第2 原判決は本件却下処分が処分に当たらないとしながら本件却下処分を取消訴訟の対象と認めて本案審理をしており、最高裁判例に違反していることについて

1 原判決は、第1審判決(19頁4行目から20頁18行目まで)を一部改めて引用しているが(10頁)、その結果として、相手方が実施する「住民投票は、住民投票に付そうとする事項が重要事項に当たる場合に限り実施される(本件条例5条1項)ことからすれば、この場合に限って住民投票実施請求権が発生するといえるから、処分行政庁が、住民投票に付そうとする事項が重要事項に当たらないとして、代表者証明書交付申請の却下処分をしても、この却下処分によって、住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)が制限されるとはいえないというべきである。(原文改行)したがって、上記却下処分が住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限することを前提に、本件条例が地方自治法14条2項に違反するからこれに基づく本件処分も違法であるとする原告の上記主張は、その前提を欠くものとして採用できない。」と判示していることになる。
 つまり、投票対象が重要事項に当たる場合に限って住民投票実施請求権が発生するのであるから、投票対象が重要事項に当たらないとして代表者証明書交付申請を拒否する本件却下処分は、何ら住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限するものではないというのである。
 しかしながら、最高裁判例によれば、取消訴訟の対象となる行政庁の処分とは「公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう」(最高裁昭和39年10月29日、民集18巻8号1809頁ほか)ことは周知の通りである。原判決がいうように本件却下処分が何ら住民の権
利を制限するものでなく、「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する」ものでないとすれば、本件処分は取消訴訟の対象となる行政庁の処分ではないことになる。よって、本件訴えは行政処分でない行為の取消しを請求するものとして不適法となり、却下しなければならないはずである。
 この点について原判決(11頁)は、「おって、控訴人は、本件処分によって市民の住民投票実施請求権が制限されていないのであれば、本件処分を取消訴訟の対象とする判断と矛盾する旨主張する。しかし、本件処分が、取消訴訟の対象となることは明らかというべきところ、そのことから直ちに、本件処分によって住民投票実施請求権が制限されているということになるわけではないのであって、控訴人の上記主張は採用できない。」と判示し、本件処分が取消訴訟の対象となることは明らかであるとしている。
 このようにみると、原判決は、本件規則12条3項が条例によらないで住民投票実施請求権を制限していることが法14条2項に違反するという申立人の主張に対しては、本件却下行為は何ら住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限するものでないから違法ではないとし、そうとすればそもそも本件却下行為は取消訴訟の対象となる行政処分に当たらず、本件訴えは
不適法となるはずだという申立人の主張に対しては、本件処分は取消訴訟の対象となり、住民の権利義務を形成しまたは確定する行為(本件では住民の権利を制限する行為)であることは明らかであるとしているのであって、著しい理由の食い違いがある(よって原判決を破棄すべきであることは本件の上告理由書に記載した通りである。)。
 いずれにしろ、原判決は、上記のように「処分行政庁が、住民投票に付そうとする事項が重要事項に当たらないとして、代表者証明書交付申請の却下処分をしても、この却下処分によって、住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)が制限されるとはいえないというべきである。」(10頁)と明示しているのであるから、それにもかかわらず本件却下処分が行政処分であることを前提として本案審理を行い、本件処分は違法ではないと判断したことは、前記の最高裁判決に違反しているというほかはない。
2 さらに検討すると、申立人が前記第1で主張したように、条例によらず、規則で市長に代表者証明書の却下権限(実質的には住民投票拒否権)を付与することはできないから、本来は市長には代表者証明書の交付申請を却下する権限はない。そうとすると、申立人のした代表者証明書の交付申請は、広島市行政手続条例(以下「手続条例」という。)2条3号にいう「申請」ではなく、同条6号にいう「届出」に該当し、市長のした「却下処分」は事実行為としての交付の拒絶であることになる(この点については3で後述する。なお、手続条例36条により、申立人の届出は提出先とされている相手方の事務所に到達したから市長には証明書の交付義務があり、交付の拒絶は違法である。)。
この点からみても、市長のした却下処分は事実行為としての交付の拒絶であり、行政処分ではないから、原判決が却下処分が行政処分であることを前提として本案審理をしたことは前記の最高裁判決に違反するというべきである。よって、原判決には最高裁判所の判例(前掲、最高裁昭和39年10月29日、民集18巻8号1809頁ほか)と相反する判断があるから、本件は民事訴訟法第318条
1項の事件に該当する。
3 本件却下処分の取消訴訟を提起した申立人が、前記のように本件却下処分には処分性がない旨の主張をすることは、訴訟上の信義則に反する疑いがないではないので、念のため付言する。
 申立人は、本件訴訟を遂行する過程において、本件条例は前記第1の3でみた許可型(首長や議会に実質的に投票実施の拒否権を認める制度をいう。)ではなく、実施型(首長や議会に拒否権を認めず、所定の署名数が集まれば投票を実施する制度をいう。)であると確信するに至っている。なぜならば、本件条例は何ら市長に重要事項該当性の判断権や代表者証明書交付申請を却下する権限を与え
ておらず、むしろ市民(投票資格者)が署名をする際に重要事項該当性を判断することを想定していると解されるからである。所定の署名数が集まった事項は市政運営上の重要事項なのであり、投票結果に拘束力のない住民投票制度にあってはどのような事項について住民投票を実施しても問題がないことは前記第1の3でみた通りである。
 市長に代表者証明書交付申請を却下する権限がないとすれば、本件規則12条1項の交付申請は広島市行政手続条例(以下「手続条例」という。)2条3号にいう許認可の「申請」ではなく、同条6号にいう「届出」であり、手続条例36条によって形式上の要件(本件条例2条が規定する重要事項該当性と除外事項該当性については、市長にはこれらについての判断権がないから、形式上の要件と
解することはできないはずである。)を満たした申請書(届出)が相手方の事務所に到達したときには、届出をすべき手続上の義務は履行されたのだから、市長には代表者証明書を交付する義務があるというべきである。
 そして、市長に交付申請を却下する権限はないのだから、本件規則12条3項にいう「却下」はもとより行政処分ではなく、事実行為としての証明書交付の拒絶であるというほかはない(なお、形式上の要件を満たした届出がなされたのに代表者証明書の交付を拒絶することは手続条例36条に違反すると解されるから、本件規則12条3項は手続条例に違反して違法である。)。
 そうとすると、申立人は本来は却下処分の取消訴訟ではなく、当事者訴訟又は民事訴訟により、代表者証明書の交付請求をすべきであったことになる。しかしながら、本件規則が市長に却下権限を与えているため、申立人はやむなく却下処分の取消訴訟を提起したのである。よって、本訴提起後に市長には却下権限のないことに気付き、却下の処分性を否定する趣旨の主張をしたとしても、その原因
は本件規則を制定した市長及び相手方の側にもあるのだから、訴訟上の信義則に反することにはならない。
 そして、市長に却下処分をする権限はなく、本件訴えは処分でない行為を対象とする不適法なものであるとして却下されれば、市長に代表者証明書交付申請を却下する権限がないことが判決で認定されたことになる。申立人が改めて形式上の要件を満たした届出をすれば、市長には交付を拒否(却下)する権限はないのだから、手続条例36条によって市長には交付義務があることになり、申立人は証明書の交付を受けて本件訴訟を提起した目的を達成することができる。よって、申立人には却下行為に処分性がないことを主張する利益があるというべきである。
 なお、本件却下処分が条例上の根拠を欠くことなどを理由として取り消されるか、又は本件処分は条例上の根拠を欠くから本件訴えは処分でない行為を対象としているとして却下されれば、申立人はいずれの場合も本件訴訟を提起した目的を達成できるので、結論はいずれであっても構わないと考えている。

第3 仮に市長の却下処分が行政処分であるとすれば、広島市行政手続条例5条の処分基準が定められていないから、本件却下処分は違法であることについて

 手続条例5条1項は、「行政庁は、申請により求められた許認可等をするかどうかをその条例等の定めに従って判断するために必要とされる基準(以下「審査基準」という。)を定めるものとする。」と規定している。そして、同条2項は審査基準はできる限り具体的なものとしなければならないと規定し、3項は特別の支障があるときを除き審査基準を公にしておかなければならないと規定している。
 また、手続条例2条3号は、「申請」とは「条例等に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(「以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。」と規定している。
 以上の規定によると、仮に申立人のした交付申請が手続条例2条3号にいう「申請」であり、市長のした却下処分が「許認可等」の処分であるとすれば、市長は手続条例5条により、できる限り具体的な審査基準を定め、公にしておかなければならないことになる。ところが、市長は代表者証明書交付申請を却下する場合について何らの基準を定めていない。したがって、本件却下処分には手続的な違法性があることは明らかである。
 行政手続きの違法性は、その違法性がなければ処分庁が「さきにした判断と異なる判断に到達する可能性がなかったとはいえない」場合に当該処分の取消事由となると解されるところ(最高裁昭和46年10月28日判決・民集25巻7号1037頁、1042頁参照)、本件においても市長ができる限り具体的な審査基準を定め、これに照らして処分を行っていれば異なる判断に到達する可能性が
なかったとはいえないから(適切な審査基準が設定されていれば、代表者証明書が交付された可能性があるというべきである。)、市長が何らの審査基準を定めていなかったことは本件却下処分の取消事由となるというべきである(処分基準が設定・公表されずになされた処分が違法として取り消された最近の事例として、那覇地裁平20年3月11日判決・判時2056号56頁、東京高裁平13年6月14日判決・判時1757号51頁がある。)。
 住民が適正な手続きに基づいた行政処分を受ける権利は憲法31条で保障されており、処分基準を設定すべきことは前記の最高裁判決及び行政手続法5条でも処分庁に義務付けられているのであるから、本件は法令の解釈に関する重要な事項を含んでおり、民事訴訟法318条1項が定める事件に該当する。

第4 本件の訴えの利益について

 申立人は「旧広島市民球場の解体の賛否を問う住民投票」の実施を請求したところ、広島市長から却下処分を受けたものであるが、旧広島市民球場は本年5月頃に解体されてしまった。
 しかし、上告人が本件の住民投票を請求した目的は、広島市の戦後復興の一つの象徴である旧広島市民球場を意味ある形で保存、活用するためであり、球場自体の保存が不可能であれば、何らかの方法で後世に旧広島市民球場の記憶を残した上、市民のスポーツや文化活動の場として跡地の整備を求めることを当然に意図していた。よって、本件の住民投票の請求には跡地の整備を求める趣旨も含んでいたというべきである。
 ところが、広島市は本件跡地を市の意向にそった案に基づいて開発することを計画しており、旧広島市民球場の跡地にふさわしいスポーツや文化活動の場として整備して欲しいという市民の要望に耳を傾けようとしていない。よって、上告人は上記の趣旨に従って跡地の整備を行うことを求めるために、住民投票を請求する必要がある(なお、上記の趣旨に従った跡地の整備が市政運営上の重要事項として投票の対象になるかどうかは、市長や裁判所ではなく、署名を通じて広島市民が判断すべき問題である。)。
 原判決が確定してしまうと、申立人が新たに代表者証明書の交付を申請しても、市長は重要事項でないとして再び申請を却下する可能性がきわめて高いことは明らかである。したがって、申立人は本件で勝訴し、住民投票の内容を補正ないし修正して代表者証明書の交付を受ける必要があるから、申立人にはなお本件却下処分の取消しを求める訴えの利益があるというべきである。
 仮に訴えの利益がないとしても、今日では各地の地方公共団体で常設型住民投票条例の制定が進められていることに鑑みれば、本件規則及び本件処分の違法性が看過されると地方自治法14条2項に違反した条例が各地で制定されることになりかねず、法律による行政の原理ないし法治主義に反する事態が出来するおそれがあるばかりか、前記の住民の不信感を増幅し(前記第1の5参照)、ひいては日本における地方自治の進展を妨げることになるから、本件規則及び本件処分が違法であることを傍論で判断していただきたい。

以上
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by shiminwomamoru | 2012-08-14 18:03 | 住民投票について
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