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旧広島市民球場の歴史と未来を守る会

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カテゴリ:住民投票について( 17 )

「旧広島市民球場解体の賛否を問う」住民投票について

上告受理申立て理由書  (後半)

第2 原判決は本件却下処分が処分に当たらないとしながら本件却下処分を取消訴訟の対象と認めて本案審理をしており、最高裁判例に違反していることについて

1 原判決は、第1審判決(19頁4行目から20頁18行目まで)を一部改めて引用しているが(10頁)、その結果として、相手方が実施する「住民投票は、住民投票に付そうとする事項が重要事項に当たる場合に限り実施される(本件条例5条1項)ことからすれば、この場合に限って住民投票実施請求権が発生するといえるから、処分行政庁が、住民投票に付そうとする事項が重要事項に当たらないとして、代表者証明書交付申請の却下処分をしても、この却下処分によって、住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)が制限されるとはいえないというべきである。(原文改行)したがって、上記却下処分が住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限することを前提に、本件条例が地方自治法14条2項に違反するからこれに基づく本件処分も違法であるとする原告の上記主張は、その前提を欠くものとして採用できない。」と判示していることになる。
 つまり、投票対象が重要事項に当たる場合に限って住民投票実施請求権が発生するのであるから、投票対象が重要事項に当たらないとして代表者証明書交付申請を拒否する本件却下処分は、何ら住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限するものではないというのである。
 しかしながら、最高裁判例によれば、取消訴訟の対象となる行政庁の処分とは「公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう」(最高裁昭和39年10月29日、民集18巻8号1809頁ほか)ことは周知の通りである。原判決がいうように本件却下処分が何ら住民の権
利を制限するものでなく、「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する」ものでないとすれば、本件処分は取消訴訟の対象となる行政庁の処分ではないことになる。よって、本件訴えは行政処分でない行為の取消しを請求するものとして不適法となり、却下しなければならないはずである。
 この点について原判決(11頁)は、「おって、控訴人は、本件処分によって市民の住民投票実施請求権が制限されていないのであれば、本件処分を取消訴訟の対象とする判断と矛盾する旨主張する。しかし、本件処分が、取消訴訟の対象となることは明らかというべきところ、そのことから直ちに、本件処分によって住民投票実施請求権が制限されているということになるわけではないのであって、控訴人の上記主張は採用できない。」と判示し、本件処分が取消訴訟の対象となることは明らかであるとしている。
 このようにみると、原判決は、本件規則12条3項が条例によらないで住民投票実施請求権を制限していることが法14条2項に違反するという申立人の主張に対しては、本件却下行為は何ら住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限するものでないから違法ではないとし、そうとすればそもそも本件却下行為は取消訴訟の対象となる行政処分に当たらず、本件訴えは
不適法となるはずだという申立人の主張に対しては、本件処分は取消訴訟の対象となり、住民の権利義務を形成しまたは確定する行為(本件では住民の権利を制限する行為)であることは明らかであるとしているのであって、著しい理由の食い違いがある(よって原判決を破棄すべきであることは本件の上告理由書に記載した通りである。)。
 いずれにしろ、原判決は、上記のように「処分行政庁が、住民投票に付そうとする事項が重要事項に当たらないとして、代表者証明書交付申請の却下処分をしても、この却下処分によって、住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)が制限されるとはいえないというべきである。」(10頁)と明示しているのであるから、それにもかかわらず本件却下処分が行政処分であることを前提として本案審理を行い、本件処分は違法ではないと判断したことは、前記の最高裁判決に違反しているというほかはない。
2 さらに検討すると、申立人が前記第1で主張したように、条例によらず、規則で市長に代表者証明書の却下権限(実質的には住民投票拒否権)を付与することはできないから、本来は市長には代表者証明書の交付申請を却下する権限はない。そうとすると、申立人のした代表者証明書の交付申請は、広島市行政手続条例(以下「手続条例」という。)2条3号にいう「申請」ではなく、同条6号にいう「届出」に該当し、市長のした「却下処分」は事実行為としての交付の拒絶であることになる(この点については3で後述する。なお、手続条例36条により、申立人の届出は提出先とされている相手方の事務所に到達したから市長には証明書の交付義務があり、交付の拒絶は違法である。)。
この点からみても、市長のした却下処分は事実行為としての交付の拒絶であり、行政処分ではないから、原判決が却下処分が行政処分であることを前提として本案審理をしたことは前記の最高裁判決に違反するというべきである。よって、原判決には最高裁判所の判例(前掲、最高裁昭和39年10月29日、民集18巻8号1809頁ほか)と相反する判断があるから、本件は民事訴訟法第318条
1項の事件に該当する。
3 本件却下処分の取消訴訟を提起した申立人が、前記のように本件却下処分には処分性がない旨の主張をすることは、訴訟上の信義則に反する疑いがないではないので、念のため付言する。
 申立人は、本件訴訟を遂行する過程において、本件条例は前記第1の3でみた許可型(首長や議会に実質的に投票実施の拒否権を認める制度をいう。)ではなく、実施型(首長や議会に拒否権を認めず、所定の署名数が集まれば投票を実施する制度をいう。)であると確信するに至っている。なぜならば、本件条例は何ら市長に重要事項該当性の判断権や代表者証明書交付申請を却下する権限を与え
ておらず、むしろ市民(投票資格者)が署名をする際に重要事項該当性を判断することを想定していると解されるからである。所定の署名数が集まった事項は市政運営上の重要事項なのであり、投票結果に拘束力のない住民投票制度にあってはどのような事項について住民投票を実施しても問題がないことは前記第1の3でみた通りである。
 市長に代表者証明書交付申請を却下する権限がないとすれば、本件規則12条1項の交付申請は広島市行政手続条例(以下「手続条例」という。)2条3号にいう許認可の「申請」ではなく、同条6号にいう「届出」であり、手続条例36条によって形式上の要件(本件条例2条が規定する重要事項該当性と除外事項該当性については、市長にはこれらについての判断権がないから、形式上の要件と
解することはできないはずである。)を満たした申請書(届出)が相手方の事務所に到達したときには、届出をすべき手続上の義務は履行されたのだから、市長には代表者証明書を交付する義務があるというべきである。
 そして、市長に交付申請を却下する権限はないのだから、本件規則12条3項にいう「却下」はもとより行政処分ではなく、事実行為としての証明書交付の拒絶であるというほかはない(なお、形式上の要件を満たした届出がなされたのに代表者証明書の交付を拒絶することは手続条例36条に違反すると解されるから、本件規則12条3項は手続条例に違反して違法である。)。
 そうとすると、申立人は本来は却下処分の取消訴訟ではなく、当事者訴訟又は民事訴訟により、代表者証明書の交付請求をすべきであったことになる。しかしながら、本件規則が市長に却下権限を与えているため、申立人はやむなく却下処分の取消訴訟を提起したのである。よって、本訴提起後に市長には却下権限のないことに気付き、却下の処分性を否定する趣旨の主張をしたとしても、その原因
は本件規則を制定した市長及び相手方の側にもあるのだから、訴訟上の信義則に反することにはならない。
 そして、市長に却下処分をする権限はなく、本件訴えは処分でない行為を対象とする不適法なものであるとして却下されれば、市長に代表者証明書交付申請を却下する権限がないことが判決で認定されたことになる。申立人が改めて形式上の要件を満たした届出をすれば、市長には交付を拒否(却下)する権限はないのだから、手続条例36条によって市長には交付義務があることになり、申立人は証明書の交付を受けて本件訴訟を提起した目的を達成することができる。よって、申立人には却下行為に処分性がないことを主張する利益があるというべきである。
 なお、本件却下処分が条例上の根拠を欠くことなどを理由として取り消されるか、又は本件処分は条例上の根拠を欠くから本件訴えは処分でない行為を対象としているとして却下されれば、申立人はいずれの場合も本件訴訟を提起した目的を達成できるので、結論はいずれであっても構わないと考えている。

第3 仮に市長の却下処分が行政処分であるとすれば、広島市行政手続条例5条の処分基準が定められていないから、本件却下処分は違法であることについて

 手続条例5条1項は、「行政庁は、申請により求められた許認可等をするかどうかをその条例等の定めに従って判断するために必要とされる基準(以下「審査基準」という。)を定めるものとする。」と規定している。そして、同条2項は審査基準はできる限り具体的なものとしなければならないと規定し、3項は特別の支障があるときを除き審査基準を公にしておかなければならないと規定している。
 また、手続条例2条3号は、「申請」とは「条例等に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(「以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。」と規定している。
 以上の規定によると、仮に申立人のした交付申請が手続条例2条3号にいう「申請」であり、市長のした却下処分が「許認可等」の処分であるとすれば、市長は手続条例5条により、できる限り具体的な審査基準を定め、公にしておかなければならないことになる。ところが、市長は代表者証明書交付申請を却下する場合について何らの基準を定めていない。したがって、本件却下処分には手続的な違法性があることは明らかである。
 行政手続きの違法性は、その違法性がなければ処分庁が「さきにした判断と異なる判断に到達する可能性がなかったとはいえない」場合に当該処分の取消事由となると解されるところ(最高裁昭和46年10月28日判決・民集25巻7号1037頁、1042頁参照)、本件においても市長ができる限り具体的な審査基準を定め、これに照らして処分を行っていれば異なる判断に到達する可能性が
なかったとはいえないから(適切な審査基準が設定されていれば、代表者証明書が交付された可能性があるというべきである。)、市長が何らの審査基準を定めていなかったことは本件却下処分の取消事由となるというべきである(処分基準が設定・公表されずになされた処分が違法として取り消された最近の事例として、那覇地裁平20年3月11日判決・判時2056号56頁、東京高裁平13年6月14日判決・判時1757号51頁がある。)。
 住民が適正な手続きに基づいた行政処分を受ける権利は憲法31条で保障されており、処分基準を設定すべきことは前記の最高裁判決及び行政手続法5条でも処分庁に義務付けられているのであるから、本件は法令の解釈に関する重要な事項を含んでおり、民事訴訟法318条1項が定める事件に該当する。

第4 本件の訴えの利益について

 申立人は「旧広島市民球場の解体の賛否を問う住民投票」の実施を請求したところ、広島市長から却下処分を受けたものであるが、旧広島市民球場は本年5月頃に解体されてしまった。
 しかし、上告人が本件の住民投票を請求した目的は、広島市の戦後復興の一つの象徴である旧広島市民球場を意味ある形で保存、活用するためであり、球場自体の保存が不可能であれば、何らかの方法で後世に旧広島市民球場の記憶を残した上、市民のスポーツや文化活動の場として跡地の整備を求めることを当然に意図していた。よって、本件の住民投票の請求には跡地の整備を求める趣旨も含んでいたというべきである。
 ところが、広島市は本件跡地を市の意向にそった案に基づいて開発することを計画しており、旧広島市民球場の跡地にふさわしいスポーツや文化活動の場として整備して欲しいという市民の要望に耳を傾けようとしていない。よって、上告人は上記の趣旨に従って跡地の整備を行うことを求めるために、住民投票を請求する必要がある(なお、上記の趣旨に従った跡地の整備が市政運営上の重要事項として投票の対象になるかどうかは、市長や裁判所ではなく、署名を通じて広島市民が判断すべき問題である。)。
 原判決が確定してしまうと、申立人が新たに代表者証明書の交付を申請しても、市長は重要事項でないとして再び申請を却下する可能性がきわめて高いことは明らかである。したがって、申立人は本件で勝訴し、住民投票の内容を補正ないし修正して代表者証明書の交付を受ける必要があるから、申立人にはなお本件却下処分の取消しを求める訴えの利益があるというべきである。
 仮に訴えの利益がないとしても、今日では各地の地方公共団体で常設型住民投票条例の制定が進められていることに鑑みれば、本件規則及び本件処分の違法性が看過されると地方自治法14条2項に違反した条例が各地で制定されることになりかねず、法律による行政の原理ないし法治主義に反する事態が出来するおそれがあるばかりか、前記の住民の不信感を増幅し(前記第1の5参照)、ひいては日本における地方自治の進展を妨げることになるから、本件規則及び本件処分が違法であることを傍論で判断していただきたい。

以上
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by shiminwomamoru | 2012-08-14 18:03 | 住民投票について

「旧広島市民球場解体の賛否を問う」住民投票について

上告受理申立て理由書  (前半)

平成24年7月31日 最高裁判所御中
申立人 広島市中区舟入本町××××
    土屋時子
相手方 広島市中区国泰寺町1丁目6番34号
    広島市
    同代表者・処分行政庁広島市長松井一實

平成24年(行ノ)第7号行政処分取消請求事件

上告受理申立ての理由

第1 原判決が、条例によらず規則によって市長が本件却下処分を行い、住民投票請求権を制限することができるとしたことは、地方自治法14条2項に違反することについて

1 地方自治法(以下「法」という。)14条2項は、「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。」と規定している。広島市民が広島市住民投票条例(以下「本件条例」という。)5条に基づいて住民投票の請求をするためには、広島市住民投票条例施行規則(以下「本件規則」という。)12条1項に基づき、広島市長(以下「市長」という。)に対して「住民投票実施請求代表者証明書」(以下「代表者証明書」という。)の交付を申請しなければならないが、市長が当該投票の対象は本件条例2条にいう「市政運営上の重要事項」(以下「重要事項」という。)に当たらないとして代表者証明書の交付申請を却下すると、市民は投票の実施のために必要な署名収集を開始することができなくなり、結果的に住民投票の実施は不可能となるから、市長の却下行為は本件条例によって市民に付与された住民投票請求権を制限する行為にほかならない。よって、市長に却下権限があることは、法14条2項により、本件条例で規定しなければならないというべきである。
 ところが、本件条例は、いつ、だれが重要事項該当性を判断するのかについて何も規定していないから、代表者証明書の交付申請時に、市長が重要事項該当性を判断し、交付申請を却下して住民投票の実施を拒否する権限があるということはできないはずである。そうすると、本件却下処分は、市長が条例によらないで公権力を行使し、住民の住民投票請求権を制限するものであって、法14条2項
に違反して違法であるから、取り消されるべきである(むしろ本件処分は条例上の根拠を欠いた無権限の処分であって無効と解されるが、申立人は出訴期間内に取消訴訟を提起したので、取消しを請求する。)。
 なお、日本国の法体系では、条例は規則に優位するのであるから、条例によって広島市民に付与された住民投票請求権を、条例の根拠または条例による明確な委任(市長に住民投票請求を拒否する権限を付与するのであれば、少なくとも処分庁と処分権限は条例で明記すべきである。)なしに市長が制限できないことは、法14条2項の規定を待つまでもなく明らかである。

2 本件条例17条は、「この条例に定めるもののほか、住民投票に必要な事項は、規則で定める。」と規定し、これを受けて本件規則12条2項は、市長に本件条例2条が定める重要事項該当性の判断権を認め、同条3項は市長に代表者証明書の交付申請を却下する権限を付与している。
 しかしながら、前記1でみたように、法14条2項は住民の権利を制限するには条例によらなければならないと規定しており、本件却下処分は権力的に市民の住民投票請求権を制限する行政処分なのだから、市長に却下処分をする権限があることは規則ではなく、条例で規定しなければならないというべきである。
 仮に市長の権限の一部を規則に委任するとしても、市長に重要事項該当性の判断権及び代表者証明書交付申請の却下権限(申請が却下されると住民投票の実施は不可能となるから実質的には住民投票拒否権である。)があること自体は条例の本文で規定する必要があり、本件条例17条のような包括的な委任規定によって規則に処分権限を白紙委任することは許されないというべきである。これは財
務条例が課税庁や課税要件を特定せずに規則に課税権限を白紙委任することが許されないのと同じことである。
 ちなみに、松本英明著「逐条地方自治法」(第6次改訂版)185頁は、法14条2項に違反しない事項(つまり規則で規定できる事項)の一例として、「法令や条例に規定されている規制に関する付随的事項又は実務の細目的事項に限定されたものであり、かつ、独自の規制を新たに創設するのではない事項」を挙げている。
 本件規則12条3項が定める市長の却下権限は、実質的には住民投票拒否権にほかならないから、「法令や条例に規定されている規制に関する付随的事項又は実務の細目的事項」といえないことは明らかである。また、本件条例は、いつ、だれが重要事項該当性を判断するのかについて何も規定していない(つまり、署名時に、市民が重要事項該当性を判断するものと解される。)にもかかわらず、
本件規則12条2項及び3項は、署名収集前に、市長が重要事項該当性を判断する権限があり、さらに代表者証明書の交付申請を却下する権限(住民投票拒否権)があることを定めているのであるから、「独自の規制を新たに創設」しているというべきである。
 よって本件規則12条は本件条例による委任の範囲を超えており、違法、無効であるから、本件却下処分も違法であり、取り消されるべきである。

3 念のため、市長に重要事項該当性の判断権及び代表者交付申請の却下権限を付与することは本件条例の性格をまったく変容させてしまう重大な事項であり、「法令や条例に規定されている規制に関する付随的事項又は実務の細目的事項」とはとうていいえないことを付言する。
 本件条例はいわゆる常設型住民投票条例である。常設型住民投票条例とは、予め住民投票手続を定めておき、一定数の住民の署名が集まったときには投票の実施を義務づける条例をいう。全国初の常設型住民投票条例は、愛知県高浜市が2000年12月(翌年4月施行)に制定した「高浜市住民投票条例」である。「国民投票/住民投票情報室」のホームページ(http://www.ref-info.net)によると、2012年3月現在では42の地方公共団体(市町村)が常設型住民投票条例を制定している。
 常設型住民投票条例が制定される背景には、住民投票の実施がきわめて困難であるという実情がある。常設型住民投票条例がない場合には、住民投票を実施するためには個別の案件ごとに住民投票条例を制定しなければならない。しかし、住民投票が求められるのは行政(首長)や議会の政策に住民が疑問を抱いている場合が通例であるから、首長や議会は自らの政策を否定されることを恐れ、住民
投票条例を発議したり制定することはほとんど期待できない。
 実際に、1979年から2011年末までの間に各地の地方公共団体で住民投票条例が可決された件数は509件であり、否決された件数はこれを上回る595件である。しかも、可決された509件のうち435件は市町村合併に関するもの(以下「合併型」という。)であるから、市町村合併以外の争点に関するものは74件である。このうち46件は常設型住民投票条例が可決された事例なの
で、合併以外の地域の重要争点に関するもの(以下「重要争点型」という。)は28件だけである。
 つまり、国策として進められた市町村合併に関する合併型の条例は52%が可決されているが(可決435:否決406)、それ以外の重要争点型の条例は13.6%しか可決されておらず、86.4%が否決されているのである(可決28:否決178)。この期間に実際に行われた住民投票の件数を見ても、合併型は467件であるのに対し、重要争点型は19件だけであり、「合併型:重要争
点型」の比率は96:4である(以上のデータは前出の「国民投票/住民投票情報室」のホームページによる。)。
 また、2000年1月に徳島市で吉野川可動堰建設の賛否を問う住民投票が行われたが、法74条に基づく住民投票条例の制定を求める直接請求では実に有権者の48.8%(有権者数20万8194人、有効署名数10万1535人)が署名したにもかかわらず、徳島市長は住民投票は必要ないという意見を付し、市議会は有権者のほぼ半数が制定を求めた条例案を否決した。
 このように合併以外の地域の重要争点について住民投票条例を制定し、投票を実施することは、首長や議会の壁に阻まれて非常に難しい。そこで、首長や議会による拒否権を認めず、一定数の署名が集まれば必ず投票を実施できるようにするために、常設型住民投票条例の制定が必要とされているのである。
 ところが、本件条例のように、投票対象を市政運営上の重要事項に限るものとし(2条柱書)、さらに投票対象に除外事項を規定(2条各号)すると、いつ、だれがこれを判断するのかという問題が生じる。この点については、①首長や議会(あるいは第三者機関)が判断権を有するという制度と、②その判断は住民に委ねられており、住民が署名時に判断するという制度があり得る。
 ①の制度は、ある投票対象について、首長や議会が「重要事項に該当する」あるいは「除外事項に該当しない」として投票の実施(またはその前提となる署名収集)を許可した場合に限って投票が行われるのであるから、「許可型」の常設型住民投票条例ということができる。これに対して②の制度は、ある投票対象について、所定の署名数が集まればその対象は重要事項となり、必ず投票が実施さ
れるのであるから、「実施型」の常設型住民投票条例ということができる。
 ①の許可型は、実質的に首長や議会に住民投票実施の拒否権を認めることになり、しかも「拒否処分」に対して住民が訴訟を提起することによって(本件がまさにその初めての実例である。)、投票対象となるかどうかを裁判所に決めてもらわなければならないことになる。しかも、本件条例のように、「市の機関の権限に属しない事項」(2条1号)や「前各号に定めるもののほか、住民投票に付することが適当でないと明らかに認められる事項」のような包括的な除外事項を設けると、原子力発電所建設やダム(堰)建設など、これまで投票が行われてきた事項の多くについて投票の実施が拒否される可能性があり、常設型住民投票制度の意義を大きく損なうおそれがある。

 ②の実施型は、所定数の住民の署名が集まった場合には必ず投票を実施するという常設型住民投票条例の本来の目的に適合しており、ある事項が投票対象として適切であるかどうかを住民が自ら判断するのであるから、住民自治ないし住民参加の制度としてより適切である。そもそも条例に基づく住民投票制度は、投票結果に対する尊重義務が生じるだけであり、何らの法的拘束力が生じるものでは
ないから、所定数の署名が集まったのであれば(それが投票の対象としてふさわしくなければ、所定数の署名は集まらないであろう。)、本来どのような事項に対して住民投票を行っても問題はないはずである。原理的に考えてみても、住民が住民投票によって意思を明らかにしたいと望んでいるのに、投票を禁止しなければならない事項などは存在しないであろう。
 実際にも、これまでに日本で住民投票の実施のために条例制定が求められた事例は1000件を超えているが(直接請求、首長提案及び議員提案のすべてを含む。)、これらの事例はすべて住民が地域の問題を真摯に考えた結果に基づくものであり、投票対象として不適切な事例は1件も存在しない。
 また、署名の収集は住民の労力と費用によって行われるのであるから、実施型の条例によって署名収集が行われる機会が増加しても、それによって地方公共団体の経費が不当に増加することにはならない。
 なお、申立人は、原判決がいうように(8~9頁)、すべての常設型住民投票条例が実施型でなければならないと主張しているわけではない。許可型の条例は首長や議会の拒否権を認めないという本来の常設型住民投票制度の趣旨に反するものではあるが、それでもあえて許可型の条例を制定するという地方公共団体はそうすればよいのである。しかし、条例本文が首長等の拒否権について何ら規定
せず、住民は実施型の条例が制定されたと認識していたにもかかわらず、規則が首長等に拒否権を与え、条例そのものを許可型に変容させるようなことは、住民の常設型住民投票制度に対する期待を裏切ることになりかねず、しかも条例によらないで住民投票請求権を制限することにほかならないから、法14条2項に違反すると主張しているのである。
 常設型住民投票条例の歴史は浅く、許可型と実施型の区別があることは十分に認識されていない。相手方は本件条例が許可型であると主張し、原判決もこの主張を追認していることになるが、相手方及び原判決が両者の区別を十分認識しているかどうかは疑わしい。むしろ、許可型の条例は市長に拒否権を認め、住民投票請求権を制限することになることを十分に認識していないために、本件規則が
市長に重要事項該当性の判断権及び代表者証明書交付申請の却下権限を付与することを安易に容認しているのではないだろうか。
 市長にこれらの権限を付与し、本件条例を許可型の条例とするためには、条例の本文で「市長は、住民投票の対象が2条に定める重要事項に該当するかどうか、及び同条各号に定める除外事項に該当するかどうかを判断する権限を有する。」こと、及び「市長は、住民投票の対象が2条に定める重要事項に該当しないと判断したとき、又は2条各号に定める除外事項に該当すると判断したときは、住民投票代表者証明書の交付申請を却下する。」ことを規定する必要がある。

4 原判決(10~11頁)は、前記1及び2の点につき、「確かに、本件条例において処分行政庁に却下処分をする権限があることが明記されているとはいえず、規則に委任する事項について逐一特定されているわけではないものの、被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば、本件条例自体において処分行政庁に却下処分をする権限があることを明記すべき
であるとか、規則に委任する事項を特定すべきであるとまでいうことはできず、本件条例に定めるもののほか住民投票に関し必要な事項は規則で定めること(本件条例17条)が明記されているところであるから、本件条例ないし本件規則12条3項の規定について、違法、無効な白紙委任に当たると解することはできない。」と判示している。
 原判決は、本件条例が市長の重要事項該当性の判断権及び代表者交付申請の却下権限について何も規定していないにもかかわらず、本件規則が市長にこれらの権限を付与していることが法14条2項に違反せず、本件処分は違法ではないとしているわけであるが、その理由については「被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば」と述べるだけである。
なぜ、「被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば」、市長は本件条例に明文の規定がないのに、本件規則に基づいて市民の住民投票請求権(ないしその前提となる代表者証明書交付申請権)を制限することができるのであろうか。むしろ、「被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば」、本件条例が住民に付与し
た住民投票請求権を、本件条例によらないで本件規則に基づき、市長が制限できるとすることは、法14条2項に違反することになるはずである。

 以上の次第で、原判決の理由はまったく不十分であって、原判決に理由不備の違法がある(よって原判決を破棄すべきことは、本件の上告理由書に記載した通りである。)ことは明らかである。そして、条例によらず、規則で市長の却下権限を定めることはできないから、市長のした本件却下処分は違法であり、取り消されるべきである(前述のように、むしろ本件処分は条例上の根拠を欠いた無権限の処分であって無効と解されるが、申立人は出訴期間内に取消訴訟を提起したので、取消しを請求する。)。これと異なる原判決は破棄されるべきである。
 なお、市長に重要事項該当性判断権ないし住民投票拒否権があることは条例で規定すべきであり、規則で規定することはできないという問題は、地方自治法14条2項の解釈に関する重要な事項を含んでいる。よって、本件は民事訴訟法318条1項が定める事件に該当する。

5 前記3でみたように、住民投票条例の制定および住民投票の実施が首長や議会の反対によってきわめて困難であることに鑑み、常設型住民投票条例は住民の一定の署名が集まったときには必ず投票を実施するものとして、首長や議会の拒否権を認めないことを本来の目的としている。それにもかかわらず、実際の常設型住民投票条例には、住民の署名が集まれば投票を実施する「実施型」だけでは
なく、首長や議会が同意しなければ署名の収集や投票の実施ができない「許可型」が存在している。
 本件条例のように条例自体は市長の拒否権について何ら規定していないにもかかわらず、規則に市長の拒否権が規定されているという制度の下では、市民は実施型の条例が制定されていたと考えていたのに、実際に住民投票の実施を請求しようとすると規則に基づいて市長に拒否されるという事態が生じることになり、市民の不信感を招くことになりかねない。規則によって実施型を許可型に変容さ
せるような制度は、地方自治法14条2項に違反して違法であるだけでなく、地方行政や住民参加制度に対する信頼を損なう可能性があるという観点からも許されないというべきである。
 常設型住民投票条例が投票対象を制限すると、いつ、だれが投票対象の適格性を判断するのかという問題が生じる。そして、首長や議会に判断権を認めると、当該条例は実施型から許可型に変容してしまうわけである。最初の常設型住民投票条例である高浜市条例が投票対象を制限し、後に続く地方公共団体の多くがこの点を意識せずに高浜市条例の規定を踏襲しているため(本件条例2条も高浜市
条例の丸写しである。)、常設型住民投票条例を制定し、あるいは制定を予定している地方公共団体では、常に本件と同じ問題が生じ、住民の不信感を招くおそれがあるのである。
 このような不信の拡大を防止するためにも、本件において本件規則及び本件処分の違法性を認定して他の地方公共団体の自覚を促す必要があり、その意味でも本件は法令(常設型住民投票条例)の解釈に関する重要な問題を含んでいる。
 よって、本件は民事訴訟法318条1項の事件に該当するというべきである。
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by shiminwomamoru | 2012-08-14 18:01 | 住民投票について

「旧広島市民球場解体の賛否を問う」住民投票について

7月31日に最高裁への「上告理由書」と「上告受理申立て理由書」を高等裁判所に提出いたしましたので、お知らせいたします。

尚、被上告人は現市長の松井一實氏となっていますが、当時の当事者は前市長の秋葉忠利氏であったことはあらためていうまでもあません。


上告理由書

平成24年7月31日
最高裁判所御中
上告人 広島市中区舟入本町××××
    土屋時子
被上告人 広島市中区国泰寺町1丁目6番34号
     広島市 
     同代表者兼処分行政庁広島市長松井一實

平成24年(行サ)第6号行政処分取消請求事件

上告の理由

第1 地方自治法14条2項違反の主張に対する原判決の理由不備について

1 地方自治法(以下「法」という。)14条2項は、「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。」と規定している。広島市民が広島市住民投票条例(以下「本件条例」という。)5条に基づいて住民投票の請求をするためには、広島市住民投票条例施行規則(以下「本件規則」という。)12条1項に基づき、広島市長(以下「市長」という。」)に対して「住民投票実施請求代表者証明書」(以下「代表者証明書」という。)の交付を申請しなければならないが、市長が当該投票の対象は本件条例2条にいう「市政運営上の重要事項」(以下「重要事項」という。)に当たらないとして代表者証明書の交付申請を却下すると、市民は投票の実施のために必要な署名収集を開始することができなくなり、結果的に住民投票の実施は不可能となるから、市長の却下行為は本件条例によって市民に付与された住民投票請求権を制限する行為にほかならない。よって、市長に却下権限があることは、法14条2項により、本件条例で規定しなければならないというべきである。
 ところが、本件条例は、いつ、だれが重要事項該当性を判断するのかについて何も規定していないから、代表者証明書の交付申請時に、市長が重要事項該当性を判断し、交付申請を却下して住民投票の実施を拒否する権限があるということはできないはずである。そうすると、本件却下処分は、市長が条例によらないで公権力を行使し、住民の住民投票請求権を制限するものであって、法14条2項
に違反して違法であるから、取り消されるべきである(むしろ本件処分は条例上の根拠を欠いた無権限の処分であって無効と解されるが、上告人は出訴期間内に取消訴訟を提起したので、取消しを請求する。)。
 なお、日本国の法体系では、条例は規則に優位するのであるから、条例によって広島市民に付与された住民投票請求権を、条例の根拠または条例による明確な委任(市長に住民投票請求を拒否する権限を付与するのであれば、少なくとも処分庁と処分権限は条例で明記すべきである。)なしに市長が制限できないことは、法14条2項の規定を待つまでもなく明らかである。

2 本件条例17条は、「この条例に定めるもののほか、住民投票に必要な事項は、規則で定める。」と規定し、これを受けて本件規則12条2項は、市長に本件条例2条が定める重要事項該当性の判断権を認め、同条3項は市長に代表者証明書の交付申請を却下する権限を付与している。
 しかしながら、前記1でみたように、法14条2項は住民の権利を制限するには条例によらなければならないと規定しており、本件却下処分は権力的に市民の住民投票請求権を制限する行政処分なのだから、市長に却下処分をする権限があることは規則ではなく、条例で規定しなければならないというべきである。
 仮に市長の権限の一部を規則に委任するとしても、市長に重要事項該当性の判断権及び代表者証明書交付申請の却下権限(これは実質的には住民投票拒否権である。)があること自体は条例の本文で規定する必要があり、本件条例17条のような包括的な委任規定によって規則に処分権限を白紙委任することは許されないというべきである。これは財務条例が課税庁や課税要件を特定せずに規則に課
税権限を白紙委任することが許されないのと同じことである。
 ちなみに、松本英明著「逐条地方自治法」(第6次改訂版)185頁は、法14条2項に違反しない事項(つまり規則で規定できる事項)の一例として、「法令や条例に規定されている規制に関する付随的事項又は実務の細目的事項に限定されたものであり、かつ、独自の規制を新たに創設するのではない事項」を挙げている。市長に重要事項該当性の判断権及び代表者証明書交付申請の却下権限が
あることは、実質的に市長に住民投票を拒否する権限があることを意味するから、「法令や条例に規定されている規制に関する付随的事項又は実務の細目的事項に限定されたものであり、かつ、独自の規制を新たに創設するのではない事項」といえないことは明らかであり、条例本文で定めるべきである。よって本件規則12条は本件条例による委任の範囲を超えており、違法、無効であるから、本件却下処分も違法であり、取り消されるべきである。

3 原判決(10~11頁)は、前記1及び2の点につき、「確かに、本件条例において処分行政庁に却下処分をする権限があることが明記されているとはいえず、規則に委任する事項について逐一特定されているわけではないものの、被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば、本件条例自体において処分行政庁に却下処分をする権限があることを明記すべきであるとか、規則に委任する事項を特定すべきであるとまでいうことはできず、本件条例に定めるもののほか住民投票に関し必要な事項は規則で定めること(本件条例17条)が明記されているところであるから、本件条例ないし本件規則12条3項の規定について、違法、無効な白紙委任に当たると解することはできない。」と判示している。
 原判決は、本件条例が市長の重要事項該当性の判断権及び代表者交付申請の却下権限について何も規定していないにもかかわらず、本件規則が市長にこれらの権限を付与していることが法14条2項に違反せず、本件処分は違法ではないとしているわけであるが、その理由については「被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば」と述べるだけである。
 なぜ、「被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば」、市長は本件条例に明文の規定がないのに、本件規則に基づいて市民の住民投票請求権(ないしその前提となる代表者証明書交付申請権)を制限することができるのであろうか。むしろ、「被控訴人の住民投票制度が、本件条例によって創設されたものであることに鑑みれば」、本件条例が住民に付与し
た住民投票請求権を、本件条例によらないで本件規則に基づき、市長が制限できるとすることは、法14条2項に違反することになるはずである。
 以上の次第で、原判決の理由はまったく不十分であって、原判決に理由不備の違法がある(これは民事訴訟法312条1項6号の上告理由に該当する。)ことは明らかであり、しかも本件処分が適法であるとした原判決の結論は誤りであるから、原判決を破棄すべきである。

第2 原判決は本件却下処分が住民の権利を制限するものではないとしながら取消訴訟の対象となるとしており、この点に理由の食い違い及び理由不備があることについて
1 原判決は、第1審判決(19頁4行目から20頁18行目まで)を一部改めて引用しているが(10頁)、その結果として、被上告人が実施する「住民投票は、住民投票に付そうとする事項が重要事項に当たる場合に限り実施される(本件条例5条1項)ことからすれば、この場合に限って住民投票実施請求権が発生するといえるから、処分行政庁が、住民投票に付そうとする事項が重要事項に当
たらないとして、代表者証明書交付申請の却下処分をしても、この却下処分によって、住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)が制限されるとはいえないというべきである。(原文改行)したがって、上記却下処分が住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限することを前提に、本件条例が地方自治法14条2項に違反するからこれに基づく本件処分も違法であるとする原告の上記主張は、その前提を欠くものとして採用できない。」と判示していることになる。
 つまり、投票対象が重要事項に当たる場合に限って住民投票実施請求権が発生するのであるから、投票対象が重要事項に当たらないとして代表者証明書交付申請を拒否する本件却下処分は、何ら住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限するものではないというのである。
 しかしながら、最高裁判例によれば、取消訴訟の対象となる行政庁の処分とは「公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう」(最高裁昭和39年10月29日、民集18巻8号1809頁ほか)ことは周知の通りである。原判決がいうように本件却下処分が何ら住民の権利を制限するものでなく、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定するものでないとすれば、本件処分は取消訴訟の対象となる行政庁の処分ではないことになる。よって、本件訴えは行政処分でない行為の取消しを請求するものとして不適法となり、却下しなければならないはずである。
 この点について原判決(11頁)は、「おって、控訴人は、本件処分によって市民の住民投票実施請求権が制限されていないのであれば、本件処分を取消訴訟の対象とする判断と矛盾する旨主張する。しかし、本件処分が、取消訴訟の対象となることは明らかというべきところ、そのことから直ちに、本件処分によって住民投票実施請求権が制限されているということになるわけではないのであって、控訴人の上記主張は採用できない。」と判示し、本件処分が取消訴訟の対象となることは明らかであるとしている。
 このようにみると、原判決は、本件規則12条3項が条例によらないで住民投票実施請求権を制限していることが法14条2項に違反するという上告人の主張に対しては、本件却下行為は何ら住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)を制限するものでないから違法ではないとし、そうとすればそもそも本件却下行為は取消訴訟の対象となる行政処分に当たらず、本件訴えは
不適法となるはずだという上告人の主張に対しては、本件処分は取消訴訟の対象となり、住民の権利義務を形成しまたは確定する行為(本件では住民の権利を制限する行為)であるとしているのであって、著しい理由の食い違いがある(これは民事訴訟法312条1項6号の上告理由に該当する。)。よって原判決を破棄すべきである。
 なお、前記第1でみたように、本件却下処分は住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票請求権)を制限するものである。よって、前記のように、原判決が、本件却下行為は住民の権利を制限するものでないから、本件規則が法14条2項に違反するという上告人の主張は前提を欠くと判断したことは誤りである。このような誤りが生じたのは、原判決には前記のような理由の食い違いが
あり、本件却下処分が住民の権利を制限するものであるかどうかについて、一貫した認識を欠いているからである。この点においても、原判決を破棄すべきことは明らかである。
2 原判決(11頁)は、前記のように「おって、控訴人は、本件処分によって市民の住民投票実施請求権が制限されていないのであれば、本件処分を取消訴訟の対象とする判断と矛盾する旨主張する。しかし、本件処分が、取消訴訟の対象となることは明らかというべきところ、そのことから直ちに、本件処分によって住民投票実施請求権が制限されているということになるわけではないのであって、控訴人の上記主張は採用できない。」と判示している。
 しかしながら、なぜ「本件処分が、取消訴訟の対象となることは明らかというべき」なのか、原判決はまったく理由を示していない。前記1でみたように、原判決(10頁)は、第1審判決を引用して「この却下処分によって、住民の権利(代表者証明書交付申請権ないし住民投票実施請求権)が制限されるとはいえないというべきである。」と判示しているのに、なぜ他方では突然「本件処分が、
取消訴訟の対象となることは明らかというべき」であることになるのだろうか。
まったく理由が示されていないために理解不能であり、原判決には理由不備の違法がある(これは民事訴訟法312条1項6号の上告理由に該当する。)ことは明らかである。よって、原判決を破棄すべきである。

第3 本件の訴えの利益について

 上告人は「旧広島市民球場の解体の賛否を問う住民投票」の実施を請求したところ、広島市長から却下処分を受けたものであるが、旧広島市民球場は本年5月頃に解体されてしまった。
 しかし、上告人が本件の住民投票を請求した目的は、広島市の戦後復興の一つの象徴である旧広島市民球場を意味ある形で保存、活用するためであり、球場自体の保存が不可能であれば、何らかの方法で後世に旧広島市民球場の記憶を残した上、市民のスポーツや文化活動の場として跡地の整備を求めることを当然に意図していた。よって、本件の住民投票の請求には跡地の整備を求める趣旨も含んでいたというべきである。
 ところが、広島市は本件跡地を市の意向にそった案に基づいて開発することを計画しており、旧広島市民球場の跡地にふさわしいスポーツや文化活動の場として整備して欲しいという市民の要望に耳を傾けようとしていない。よって、上告人は上記の趣旨に従って跡地の整備を行うことを求めるために、住民投票を請求する必要がある(なお、上記の趣旨に従った跡地の整備が市政運営上の重要事項として投票の対象になるかどうかは、市長や裁判所ではなく、署名を通じて広島市民が判断すべき問題である。)。
 原判決が確定してしまうと、上告人が新たに代表者証明書の交付を申請しても、市長は重要事項でないとして再び申請を却下する可能性がきわめて高いことは明らかである。したがって、上告人は本件で勝訴し、住民投票の内容を補正ないし修正して代表者証明書の交付を受ける必要があるから、上告人にはなお本件却下処分の取消しを求める訴えの利益があるというべきである。
 仮に訴えの利益がないとしても、今日では各地の地方公共団体で常設型住民投票条例の制定が進められていることに鑑みれば、本件規則及び本件処分の違法性が看過されると地方自治法14条2項に違反した違法な条例が各地で制定されることになりかねず、法律による行政の原理ないし法治主義に反する事態が出来するおそれがあるから、本件規則及び本件処分が違法であることを傍論で判断していただきたい。


以上
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by shiminwomamoru | 2012-08-14 17:59 | 住民投票について

良識と判決のはざま。

昨日の判決について

昨年9月8日に「旧広島市民球場解体の賛否を問う」住民投票実施請求を提出しましたが、17日には「重要事項でない」との前市長決裁で却下され、27日に不服とし提訴してから早一年が経ち、ようやく本日の判決日を迎えました。

この訴訟は、地方自治法や住民自治のあり方、その現代的な課題である住民投票制度のあり方と理念を問うものであり、住民投票手続きを巡る「自治体の裁量権の是非を問う」異例の訴訟であると言われてきました。市民の球場問題で私たち市民は排除され続け、いわば最後の手段として、司法の良識ある判断を期待しておりましたが、残念ながら棄却判決とのことです。本日の判決内容は、住民投票請求却下が不当になされたことに加え、「住民蔑視」の姿勢を示したということであり、一層失望感と憤りを感じています。

旧広島市民球場の解体に至る経過についてはご承知の通りです。市政の懸案事項、重要事項の筆頭課題であり、議会決議も二転三転した揚句、最終的に市案は白紙となり、跡地計画のないまま解体だけが進行しているという大事業です。松井市長は検討委員会を設け議論を再始動させる―とのことですが、これまで市民の声が反映されなかったのですから、これから反映されるとは到底思えません。これが「国際平和文化都市・広島」の実態です。
秋葉前市長が「市民の市民による市民のための広島市政を実現するため」と、2003年に住民投票条例を制定してから8年間、昨年初めて3件の提出がなされたのですが、全て却下されてしまいました。これからも実施されることはないでしょう。何故なら、市長や市にとって都合の悪いことは住民投票の対象にしなくてもよいという解釈がなされてしまったからです。常設型であり、発議権も住民のみ―という広島市の住民投票は、全国でも先進的と言われましたが、本当は<市民が使えない矛盾した住民投票制度>だったことが判明したのです。私は今でも、条例の不備というより条例違反を行っていると思うのですが。いくら理想的な制度であっても、正しく機能されなければ何の役にも立ちません。
実は6月に松井市長に確認しましたら「旧市民球場の問題は重要事項である」と私たちの前で明言されました。「重要事項ではない」という却下事由がなくなった現在、住民投票の再請求が出されたら、今度は市や市長はどのような回答をするのでしょうか。しかしながら、もしも請求が受理され、必要数の連署が集まり、初の住民投票が実施される事態になったとしても、本格的な解体がなされている現在、投票することの意味は全て失われてしまいました。戦後復興の大切な財産を惜しげもなく消し去った、広島市及び現市長は、市民に対しどのような弁解と償いをするのでしょうか。
旧広島市民球場の問題は単なる球場問題ではなく、被爆地広島の復興と文化に関わる問題だと思っています。広島市には被爆地広島として世界に示せる都市政策が何もないことは、広島市民として最も残念なことであり、魅力ある都市としての発展も危ぶまれます。

もちろん控訴いたします。         以上

                     平成23年9月14日
                      原告 土屋時子
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by shiminwomamoru | 2011-09-15 20:44 | 住民投票について

判決短信。

本日、広島地方裁判所にて住民投票却下処分に対する「行政処分取消請求事件」の判決がありました。
申し渡しは「棄却」でした。

「不当判決」
こののぼりを掲げて廷内を走るベキだったでしょうか。(笑)
まあ、日本の裁判でなされる行政裁判というものは、ほとんど不当ですから、いちいちそんなことをしていたら廷内が大混乱でしょう。

この判決に対する原告からの反論は、またあらためて掲載いたします。

追記
人生、まっとうに生きさせたいのなら、決して裁判官になんかさせてはいけませんよ。世のお母さんたち。
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by shiminwomamoru | 2011-09-14 17:49 | 住民投票について

広島市の住民投票棄却に対する意見書

先日行われた住民投票請求棄却に対する「行政処分取消請求事件」の公判では、原告が提出した意見書に対して、被告の広島市が反論したいということで、結審が延期されました。

その意見書を下記に掲載しておきます。


平成22年(行ウ)第26号 行政処分取消請求事件

意見書
2011年4月20日

広島修道大学法学部教授 村上 博

第1 結論 
広島市住民投票実施請求代表者証明書交付申請却下処分(以下「本件処分」という。)は違法である。

第2 理由

1 広島市住民投票条例(以下「本件条例」という。)および広島市住民投票条例施行規則(以下「本件規則」という。)は違法であり、違法な本件条例および本件規則に基づく本件処分は違法である。
本件処分は、広島市民の住民投票実施請求代表者証明書の交付申請権を制限する、原告に対する不利益処分である。地方自治法14条2項によれば、「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない」。ある規制がこの「義務を課し、又は権利を制限する」ことに当たるかどうかにつき、抽象的には、以下の事項は地方自治法14条2項の範囲外になる、と考えられている(松本英昭『新版 逐条地方自治法(第5次改訂版)』学陽書房、2009年、176頁)。
①権利義務に関する規定であって規制には関連しない事項
②権利義務に関する規定であって規制に関連する事項であるが、基本的な規範の定
立に該当しない事項
③権利義務に関する規定であって規制に関連する事項であり、かつ、基本的な規範の定立に該当する事項であるが、その内容は法令や条例に規定されている規制に関する付随的事項又は実務の細目的事項に限定されたものであり、かつ、独自の規制を新たに創設するものではない事項
本件処分は権利義務に関する規定であって規制に関連する事項であり、かつ、基本的な規範の定立に該当する事項であり、かつ独自の規制を新たに創設する事項であるので、上記の①から③のどれにも該当しない。本件処分に関する法令による特別の定めはないので、本件処分は、条例に明文の根拠規定が置かれなければならない。しかし本件条例は、本件処分についての明文規定をおかず、本件条例17条の委任規定に基づき、本件規則12条が本件処分について規定する。本来であれば条例で規定しなければならない事項が規則に委任されていることになり、本件規則および本件条例は地方自治法に違反する。したがって違法な本件規則および本件条例に基づく本件処分は違法である。

2 かりに本件条例および本件規則が適法であるとしても、本件処分は、本件条例2条の「市政運営上の重要事項」の誤った解釈方法に基づいており、違法である。
本件規則12条は、市長が条例第2条の重要事項に該当しないと認めるときは、第1項の規定による申請を却下しなければならない、と定めるが、本件処分は、住民投票条例と同じ住民の直接民主主義を保障する手段である地方自治法上の条例制定請求代表者証明書交付拒否処分取消請求事件についての判例に反している。
たとえば、東京高等裁判所昭和49年8月28日判決は、つぎのように判示する。「代表者証明書の交付申請の段階において長が当該条例の内容を事前審査し、その判断により住民の条例制定請求の途を杜絶するようなことは全く法の予定しないところである」。「もし条例制定請求手続の前哨手続に過ぎない代表者証明書交付申請の段階において、長に条例案の内容の事前審査を許すものとすれば、長が反対見解に立つ限り、ややもすれば住民の条例制定請求の権利の行使が右の前哨段階において事前に阻止され爾後の手続が阻害されるおそれがある」。「条例案を一見しただけで条例で規定し得ない事項又は条例制定請求をなし得ない事項に関するものであることが、何人にも議論の余地すらない程に極めて明白である場合には、爾後の法定の手続を進めることも無意義に帰することが明らかであるから、代表者証明書の交付申請の段階において、例外的に、爾後の手続の進行を阻止することも許されてよいが、『一見極めて明白』な場合とは、法74条第1項かっこ書所掲のように法定されている場合とか、憲法改正手続を定めるものであるとか極めて局限された場合に限られ、実際にはたやすくかかる断定を下し得ないのが常である。しかるに安易に長にかかる判断を許すときは、ともすれば長の見解により代表者証明書交付申請という前哨段階において住民の条例制定請求権の行使を阻止し、条例制定請求制度を設けた趣旨を没却せしめるおそれがある。したがって、右にあげた何人にとっても自明と見られる場合を除いては、長において『一見極めて明白』との判断を下すことも許されないものというべきである」。
「代表者証明書の交付申請の手続段階においては、さきにも述べたように条例案を一見しただけで条例で規定し得ない事項又は条例制定請求をなし得ない事項であることが、何人にも議論の余地すらない程度に極めて明白であって、爾後の法定の手続を進めることが全く無意義であると認められるような特別な例外的場合のほかは、たとえ長の見解によれば条例事項にあたらないと考える場合でも、その段階で代表者証明書の交付を拒絶して住民の条例制定請求の権利の行使を阻害することは現行法上許されないものというべきである」。
 この判決につき、薄井一成氏は、「『一見して明白な』場合とは、判決にも示されているとおり、『何人にも議論の余地すらない程に極めて明白な場合』を指しており、『一見して明白か』否かを判断する主体は、一般市民になるものと解される。判断主体を長に求めれば、実質的に長に判断を委ねるのと同じ結果となりかねないためであり、本判決は、………一般市民に判断主体を求めた点において学説の支持をえた」と評価している(薄井一成「20 条例制定請求代表者証明書の交付拒否」別冊ジュリスト168号、43頁)。
 この判決に従って本件を解釈すれば、原告および市民が「市政運営上の重要事項」と判断していること自体で、「何人にも議論の余地すらない程に極めて明白な場合」に当たらないことは明らかである。したがって、原告の住民投票請求事項が「市政運営上の重要事項」に当たらない、との市長の判断は間違っており、本件処分は違法である。

3 かりに条例および規則が、市長に住民投票を求めている内容の事前審査を許しているとしても、本件住民投票請求事項は、「市政運営上の重要事項」に該当することから、「市政運営上の重要事項」に該当しないことを理由とする本件処分は違法である。
 被告は、市政運営上の重要事項の内容である「市民の福祉に重大な影響を及ぼすもの」に該当するか否かの判断に当たっては、住民投票制度の趣旨が代表民主制を補完するものであるということを前提にする必要がある、と述べる(平成22年12月14日付け第1準備書面9頁)。そこでこの問題について検討する。
 直接民主主義と間接民主主義の関係についての解釈には、被告が主張するA説「間接民主主義原則・直接民主主義例外説」だけではなく、そのほかに、B説「直接民主主義原則・間接民主主義例外説」およびC説「間接民主主義・直接民主主義併立説」があることに注目しなければならない(金子勝「236 条例制定請求権の意義―練馬区長準公選事件」別冊ジュリスト187号、487頁参照)。したがって、被告のように解釈することが当然の前提とはならいことが、まず確認されなければならない。

 つぎに、C説を主張する兼子仁氏によれば、「国政にあっては直接民主主義が議会制民主主義の補充原理であるのに対して、自治体行政にあっては、行政が議会を通さずに直接に住民の生の意思に基づくべきだという直接民主主義が、むしろ住民自治原理の主旨として、議会を通しての議会制民主主義と並立的な原理である」(兼子仁『行政法総論』筑摩書房、1983年、79頁)。なぜなら憲法92条が定める「地方自治の本旨」は団体自治と住民自治とで構成されると一般的に説明されるが、両者の関係は、「『住民自治』が基本であり、そのために『団体自治』があると、とらえるべきである」(浦部法穂『憲法教室[全訂第2版]』日本評論社、2006年、576頁)からである。したがって国政とは異なり、地方自治行政においては、住民自治が本質的なものとして憲法上保障されていることから、「市政運営上の重要事項」の解釈においては、代表民主制と直接民主制が並立するということを前提にする必要がある。

 この兼子氏の意見は、現行憲法および地方自治法を念頭においたものである。さらに被告においては、地方自治法上の直接請求制度に加えて、「市政における重要な決定は、直接市民の意思によって行うという原則です。このことを市政の場で実現するために、今年の3月議会に住民投票条例を提案しました」(広報紙「ひろしま市民と市政」平成15年12月1日号)と説明しているように、住民自治を充実させる観点から、住民投票の発議者を住民のみとする常設型の住民投票制度を創設している。したがって本件条例および本件規則の解釈においては、兼子仁氏の意見よりも一層直接民主主義を実現する観点から解釈されなければならないことになる。それ故、被告が主張するように「『市民の福祉に重大な影響を及ぼすもの』の該当性の判断に当たっては、安易に拡張解釈するのではなく、真に重大な影響があるか否かを慎重に判断する必要がある」(平成22年12月14日付け被告第1準備書面9頁)のではなく、その該当性の判断については、条例案を一見しただけで条例で規定し得ない事項または条例制定請求をなし得ない事項である場合を除いて、住民投票を求める住民の判断を尊重するように解釈されなければならない。

 本件について判断すると、旧広島市民球場は、完成当時、その「夜間照明が広島市民にとって原爆投下からの復興への希望の光であり」、「広島市民の戦後復興及び平和のシンボルとして広島市民がアイデンティティを求める状態にまでなっていた」(原告の平成22年9月27日付け訴状3頁)。それ故、旧広島市民球場であった構造物の解体の是非については、「既に旧広島市民球場に代わる広島市民球場が設置されていること」では問題は解決されないし、また市民が郷愁を感じる旧広島市民球場であった構造物の「解体によって『市民の具体的な生活等の利益に重大な影響を及ぼすもの』とまでいうことはできない」(平成22年12月14日付け被告第1準備書面10頁)と、一見して判断することはできない。したがって原告の住民投票請求事項は「現在又は将来の市民の福祉に重大な影響を及ぼし、又は及ぼすおそれのあるもの」(本件条例2条)に該当することから、本件処分は本件条例および本件規則の解釈を誤っており、違法である。

4 かりに被告が主張するように、住民投票制度の趣旨が代表民主制を補完するものであるということを前提にしても、原告の住民投票事項は「市政運営上の重要事項」に該当することから、本件処分は違法である。
 被告は、「住民投票制度の趣旨が代表民主制を補完するものであるということを前提にする必要がある」から、市政運営の重要事項の「該当性の判断に当たっては、安易に拡張解釈するのではなく、真に重大な影響があるか否かを慎重に判断する必要がある」(被告の平成22年12月14日付け第1準備書面9頁)と述べる。
まず、この主張は、被告が、現行地方自治法上の直接請求制度が存在するにもかかわらず、わざわざ本件条例を制定することによって住民自治を充実させようとする立法者意思を否定するものである。被告のように市政運営の重要事項該当性を解釈するのであれば、本件条例を制定する必要はなかったであろう。

 つぎに、この被告の主張は、原告の主張が安易な拡張解釈であることを前提にしているが、前述のように、原告の主張は安易な拡張解釈ではない。したがって旧広島市民球場であった構造物の解体の是非についての住民投票は、市政運営の重要事項に該当する。
 さらに、「真に重大な影響があるか否かを慎重に判断する」観点から、「原告が旧広島市民球場であった構造物を惜しみ、郷愁にかられることがあるとしても、それは、感情の領域の問題であって、権利又は法律上保護される利益を侵害することにはならい」(被告の平成23年2月28日付け第3準備書面)と主張する。しかし「市民の福祉に重大な影響を及ぼすもの」とは必ずしも「権利又は法律上保護される利益」に対する影響である必要はなく、かりに被告主張のように「権利又は法律上保護される利益」でなくても、「市政運営上の重要事項」に該当する。

以上、これまで述べてきたように、本件処分は違法である。

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by shiminwomamoru | 2011-05-01 11:31 | 住民投票について

国際平和文化都市首長の“反平和的”な実態。

きょう、「旧広島市民球場解体の賛否を問う」住民投票請求却下処分の取り消し請求事件の第2回口頭弁論が行われました。

昨日、名古屋市では議会の解散を求めたリコール署名の再審査の結果、有効総数が法廷数を上回り、政令指定都市ではじめて議会解散の賛否を問う住民投票の実施が決まったばかり。
その「民意」という風が、こんどは西の広島市へと向ってきそうな気がして仕方がありません。

たった数万の署名を集めることでも大変なのに、40万人近くの署名が集まったという事実は驚くばかりです。市民の市政や市議会に対する不満や憤りは、東西を問わず積もり積もっているということでしょう。
いずれ広島市でも、それが爆発するときが来そうです。

今回の口頭弁論も、そんなうねりをつくるひとつの契機になると信じています。

きょうも原告が広島市民の声を代弁して廷内で、意見陳述をしましたので、ここに転載しておきます。

以下、陳述。

 この廷内にいらっしゃる裁判官、そして傍聴席の方々にひとこと申し上げたいと思います。
 日本初の住民投票が実施されたのは1996年8月4日新潟市において、と言われています。その後住民投票は全国各地で実施され既に400件に至り、一定数の署名など条件を満たしていれば、直ちに実施できるという「常設型」の条例を制定する自治体も40を超えました。広島市は2003年に政令指定都市で初めての「常設型」を採用し、住民投票条例では先駆的、理想の都市として称賛されてきました。
 皆様ご存じのことですが昭和20年8月6日、一発の原子爆弾により廃墟となった広島市の復興にあたり、財政的支援の手が差し伸べられ、市民に勇気と希望をあたえてくれたのが「広島平和記念都市建設法」でした。この特別法を制定するためには、住民投票で過半数の同意が必要ということで、昭和24年7月7日、わが国初の住民投票が行われたのが広島市だったのです。市民の圧倒的多数の成果を得て、8月6日に公布・施行されたのも意味深いことでした。この法律により広島の復興は世界のシンボルの国家的事業として位置づけられ、広島は歴史的な意義を持つ都市となったのです。

 旧広島市民球場は昭和32年に市民や地元財界の寄付で造られ、広島市民にとって「戦後復興の歴史的シンボル」であることは市民に限らず誰もが認めるところです。世界遺産である原爆ドームと並び、平和都市にふさわしいスポーツの殿堂として建設され、53年間広島市民を見守り続けてきました。その市民球場の解体条例は多くの疑念を抱えたまま、6月22日の広島市議会で決議されてしまいました。広島市は「5年の歳月をかけて正当な手続きをふんできた」と強弁していますが、市民合意がなされていないことは情報公開請求で入手した多くの資料が物語っています。私たちは「解体する前にもっと市民の意見を聞いてほしい」と、請願署名等も重ねてきましたが全く無視されてきたのです。広島市政に市民の意思が反映されることは無いと思い知らされ、私たちは最後の手段として、9月8日「旧広島市民球場の解体の賛否を問う」住民投票を請求しました。広島市の住民投票条例施行後初めての請求で、多くの市民から協力の申入れもあり住民投票への期待も高まりました。ところが広島市は9月17日「市政運営上の重要事項に該当しない」との理由で却下しました。決裁者は市長とのこと、「重要事項でない」ことの内容説明を市長に申し入れしましたが、未だ説明はありません。広島市の住民投票条例の発議権は市民に限られているのに、この制度は市長のためにあるものなのでしょうか。
 
 今回の広島市の却下処分は多くの問題を提示していますが、主には次の二つの問題だと思います。つまり「裁量権」が市長にあるかどうかの問題、そして「重要事項でない」という論拠があるかどうかの問題です。「裁量権」については「市の事業の是非を問う住民投票の可否を、市長自らが判断するとなれば、住民投票制度そのものが成立せず、行政の裁量権を認めるべきでない」と多くの行政学者も述べておられます。また「重要事項か否か」については、「都心の跡地計画で市民生活への影響が大きい」「総予算が34億以上の公共事業である」「解体のためには昭和32年に施行された条例を廃止する条例が必要であった」「現在又は将来の市民福祉に重要な影響を及ぼし、または及ぼすおそれが大いにある」などを見れば一目瞭然のことです。市長自身が「旧市民球場の整備事業は、住民投票の筆頭格にあげられる事項である」と、広島市の広報でも明言されているのです。旧広島市民球場の解体が「重要事項でない」とすれば、一体どのようなことが重要事項なのでしょうか。
 一市民として私が申し上げたいことは、今回の問題は条例の不備というより条例違反であり、住民投票条例自体を否定する不当なことだということです。なぜなら広島市と同じような住民投票条例は多くありますが、重要事項かどうかを市長が決め、要件を問う以前に請求却下した都市は広島市が初めてだからです。憲法で保障された主権在民を否定する市長と言わざるを得ません。このような市政を行う市長が、果たして国際平和文化都市の市長と言えるのでしょうか。

 私たちは住民投票請求が却下されたため、市民自らの手で「旧広島市民球場解体の賛否を問う」模擬住民投票を市内四カ所で実施いたしました。およそ2000 票を集めた投票の結果は、解体賛成が233 票、反対が1651 票。つまり解体に賛成が12.4%、解体に反対が87.6%という厳然たるデータとなってあらわれました。やはり広島市が主張してきたデータとは全く逆のもので、存続を求める希望者は市民の9割近くもいるという結果でした。

 11月29日から広島市は解体工事に着手いたしました。もしも9月に住民投票が実施されていれば、あるいは状況が変わっていたかもしれないと思うと残念でなりません。広島市及び広島市長の罪は大きいと思います。
 しかし今ならまだ間に合います。取り返しのつかなくなる前に、「解体の賛否を問う」住民投票が実施され、これ以上広島市民の民意が無視されることのないよう、裁判長にはすみやかに裁決いただきたく切にお願いいたします。
   (以上)
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by shiminwomamoru | 2010-12-16 16:57 | 住民投票について

民意なき市政の「足跡」。

さきの12月10日付で、「(旧広島市民球場の解体を前提とした広島市の)旧広島市民球場跡地利用計画案の賛否を問う」住民投票請求却下処分に対する異議申立に対する決定がありました。

「本件異議申立てを棄却する。」との結論でした。
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その詳しい内容や、今後の展開については、あらためてお知らせします。
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by shiminwomamoru | 2010-12-13 11:20 | 住民投票について

「市民の迷惑」ルーツは同じ。

私たち広島市民の間では「市民局 市民活動停滞課」ともいわれはじめた「市民活動推進課」に、きのう行ってきました。

もちろん「茶飲み話」をしにいったわけではありません。
先に、というか大昔に提出した住民投票却下処分に対する異議申し立てに対する回答がいつまでもないので、確認に出向いたのです。

「(旧広島市民球場の解体を前提とした広島市の)旧広島市民球場跡地利用計画案の賛否を問う」という住民投票実施請求をしたのが9月24日。

その趣旨は下記の通りです。

請求の要旨

 (旧)広島市民球場のある基町と、その周辺の紙屋町、八丁堀は戦前から広島市の中心地として栄えてきましたが、原子爆弾の投下によって灰燼に帰してしまいました。しかしながら広島市民の並々ならぬ意欲と努力とによって奇跡的に復興し、いまも広島市の中心地でありつづけています。
 その復興にあたって市民の精神的なシンボルとなったのが昭和32年7月に多くの市民の願いによって建設された(旧)広島市民球場であることはいうまでもありません。
 ところが、平成21年に新球場が広島駅東部のヤード跡地に開業して広島東洋カープの本拠地が移転したことで、同球場の存在意義が問われることになり、その処遇が広島市の大きな課題となっています。
 この問題にあたって広島市は、「本市の将来にとって大変重要な案件であり、市民の関心も高い(2008.02.08記者会見における市長のコメント)」もので、「国家的プロジェクトというふうに考えてもいいと思う(同.2009.09.04)」という意気込みで、従来は80万人あまりであった同球場の動員の2倍にあたる年間150万人の動員をはかることを目標に検討を進めてきました。
 しかしながら最終的に広島市が策定した「現球場を解体して緑地広場にする」という計画案については、その決定にいたるプロセスに多くの市民が疑念をもち、計画案そのものに疑問を抱いています。いまもって広島市が策定した計画案は市民の支持を得ているとはいえず、これがそのまま実行された場合、広島市の将来に大きな禍根を残すことは疑う余地がありません。
 そこで請求代表者は、「広島市住民投票条例」に基づき、ここに「(旧広島市民球場の解体を前提とした広島市の)旧広島市民球場跡地利用計画案の賛否を問う」広島市住民投票の実施を請求いたします。


この請求に対して、広島市から正式に「却下」の回答があったのが11月1日。ひと月あまりも経ってのことでした。
その場で停滞課じゃなかった、推進課から却下にいたる説明を受けましたが、その時の模様はこうでした。

「国家的プロジェクトといってもいい」と市長が豪語している計画を、当の本人が「市政運営上の重要事項にあたらないので(住民投票実施請求は)却下する」というのですから、あきれます。
まあ市政のトップがそんなトンチンカンであるがゆえに広島市はここまでひどくなったのか、そう得心がいくとともに、そんなトップと市民との板挟みになって市民推進課が停滞課になってしまうのも無理からぬことだといらない同情までしてしまいました。

それはさておき、さっそく却下処分に対する異議申し立てをしようと推進課に相談したところ、
「同じ案件の異議申し立てを同じ課が受けるんですから、結果は変わりません。すぐ却下ですよ」
そう断言されました。

そんなムダはだれもしたくはありません。
それで上級官庁に異議申し立てをしようとしたのですが、そのためには広島市に申し立てをして、しゅくしゅくと却下してもらってからでなければならないということで、とりあえず異議申し立て書を提出しました。
それが11月4日のこと。

文面は下記の通りです。

さきの11月1日に、「(広島市民球場の解体を前提とした広島市の)旧広島市民球場跡地利用計画案の賛否を問う」住民投票実施請求の交付申請が却下された処分について、下記の点が承服できないの異議申立てをします。

1.今回の住民投票請求は、広島市が策定した旧広島市民球場跡地利用計画の賛否を問うためのもので、もしそのいい加減な計画案が実施されたあとの評価について問うものではありません。(注)したがって計画案そのものが市政運営上の重要事項に該当するかどうかについて考慮して判断するべきで、今回の決定理由は論理のすり替えである。

2.今回、私たち広島市民が賛否を問うべきだとした、あまりにもおそまつな「旧広島市民球場跡地利用計画」の策定責任者であり最終的に決済したのは秋葉市長であり、その賛否を問う事は「秋葉市政」の賛否を問う意味もあることはいうまでもない。その当事者が住民投票を却下しているという事実は、一般的な市民感覚からはとても理解できない非民主主義的で反平和的なもので、平和の祭典を平和都市広島に招致しようなどと世界に問えるような市政とはいいがたい。
すみやかに今回の住民投票実施請求の申請を受理して、広島市民に、そして全世界のひとびとに「平和で民主的な広島」をあらためてアピールするべきである。
  

ところが、しゅくしゅくと却下してくれるはずの推進課、まあ最終的な決裁権を持っているのは秋葉市長ですから、秋葉市長はいつまでたっても却下の回答をしぶっているのです。

じぶんが計画を決済した「跡地利用計画案」に市民が疑義を呈して請求された住民投票を、みずから却下したのみならず、そのことがおかしいんじゃないかと異議申し立てされたことも、また本人が却下したのでは、さすがの市長も体裁が悪いということなんでしょうか。

(注)却下理由について、広島市に開示請求した資料には、その「理由」が記されていました。
ここに全文転載するべきなのでしょうが、いつものように理路不整然で退屈な文章なので、打ち込む気力もわきませんし、みなさんも不快になるだけでしょうから、ここでは要点だけ。

住民投票は、「市長、議会といった代表民主制による団体意志の形成が、実際の民意と乖離したものになっている場合に適用される」制度である。
秋葉市長が決済した広島市の計画案が、まさに、「市長、議会といった代表民主制による団体意志の形成が、実際の民意と乖離したものになっている」ために住民投票実施請求をしたところ、その計画案がもし実施されたとしても(たただの空き地にして、だれも頼みもしない商工会議所が移転するだけの計画案であるから)市民生活に悪影響はない。したがって「市民の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるものに該当しないから、住民投票に付する事項とはならない。


こんなトンチンカンなロジックで却下されたことに対して、異議を申し立てたというわけです。

その文面にもありましたが、「旧広島市民球場問題」と「オリンピック誘致問題」は、同じ構図をもつ、おなじルーツから出てきた問題です。
どちらも秋葉市長の個人的な思惑や野心から生まれたもので、広島市民にまともな説明もないまま、市民の支持もないまま強行されようとしています。
これに「こども条例」や「オバマジョリティー」を加えれば、ひとりの暴君によって広島市はメチャクチャにされようとしているという地獄絵が鮮明に浮かび上がってきます。

いずれは、こうした問題に意識を持っている広島市民が団結し、それが求心力を生み強力なパワーとなって広島市が刷新されることでしょう。またそうしなければ広島市は救われません。
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イラストと本文とは、とくに関係はありません。
          
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by shiminwomamoru | 2010-12-03 12:29 | 住民投票について

民意2000の説得力。

ここで、これまでの模擬住民投票の結果を発表しておきましょう。

第1回 旧広島市民球場前投票所

 解体賛成 85票
 解体反対 930票

第2回 本通り西詰め投票所

 解体賛成 64票
 解体反対 332票

第3回 福屋角投票所

 解体賛成 58票
 解体反対 203票

第4回 五日市駅北口投票所

 解体賛成 26票
 解体反対 186票

 ということで総計は下記のとおりになりました。

  総計 1884

  解体賛成  233票  12.4%
  解体反対 1651票  87.6%

ということで、「旧広島市民球場解体の賛否」を問う唯一の意識調査の結果がこれです。

広島市はこれまで、解体反対は10%程度だと強弁していましたが、あの数字はどこからひっぱりだしてきたのでしょうか。まったく逆ですよ、S課長。
そのねつ造データをもとに市民のかけがえのない財産を破壊しようというのですから、これはもう犯罪行為といっても過言ではありません。

たったひとりのご乱心のために、こんなことにまで手をそめなければならないのだとしたら、市の職員にも同情の余地はありますが…。
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by shiminwomamoru | 2010-11-25 21:45 | 住民投票について